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京都橘大学研究ユニット

京都橘大学では、2023年度より本学の教学理念や学問・研究分野の特徴を活かし設定した4つの重点研究分野のもとに、8つの研究ユニットを立ち上げました。このユニットでは、専門分野が異なる本学研究者が集い、これまでにない研究の立ち上げに資する分野横断的な視点からの研究シーズの探索を行うこととしており、今後、各重点研究分野における中心的存在となる学際的な研究の推進が期待されています。

総合学術推進機構長
東野 輝夫

京都橘大学における重点研究分野(全4分野)

①医療と情報技術・データサイエンス

超高齢社会をむかえた現在の日本において、健康寿命を延伸し、活力のある社会を生み出すことは喫緊の課題となっています。こうした課題に対応するため、近年、飛躍的に発展したセンシング技術などの情報通信技術を活用し、それによって得たデータ(ビッグデータを含む)を解析することで、病気の予兆を早期に発見し、いわゆる未病の段階で健康状態の改善を図ることが期待されています。こうした情報技術・データサイエンスを活用した医療システムやそれを支える技術、さらにそうした技術や医療システムを社会の中で活用するためのビジネスモデルや公共政策のあり方を対象とする研究領域です。

②持続可能な共生社会 ~京都再生を中心として~

2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」が注目されているように、持続可能な社会を実現していくことは人類共通の課題です。大学の位置する京都では繊維関係だけでなく金属加工系などのものづくり産業も全体に衰退傾向にあります。コロナ感染の影響もあり、インバウンド需要の後退により観光産業もきびしい状況です。また、マンションや団地など住居を含む都市再生も課題です。これらの課題ではダイバーシティ、インクルージョンに配慮したレジリエンスな共生社会を実現することが重要になります。このような持続可能な共生社会について、人文科学、社会科学、自然科学のあらゆる領域から総合的にアプローチする研究領域です。

③こころとからだ

人間のこころとからだの結節点である脳が生命科学の最後のフロンティアとも言われるように、こころとからだの関係は未だ十分な解明がなされていない領域です。この領域における研究対象には心理学と生命健康科学のさまざまな領域を中心にアプローチすることが可能です。また、研究の成果は、医療や教育といった人を対象とする研究領域だけでなく、行動経済学などに見られるように社会を対象とする研究領域や、ディープラーニング、ロボティクスをはじめとする工学の領域などへの応用も期待されます。さらに、このこころとからだの研究分野はリハビリテーションの研究成果を地域に還元し、地域貢献につなげることのできる研究領域です。

④女性の歴史を学び、女性の未来を考える

2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」において、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントが謳われ、日本においても「女性の活躍推進のための開発戦略」が策定され、女性の教育問題や社会進出に対する様々な施策が実施されてきています。本学では、これまで女性歴史文化研究所を中心に「女性史」について様々な研究がなされてきました。これらの研究をベースに、様々な学部の教員で「女性の歴史を学び、女性の未来を考える」研究を推進することで、社会のジェンダー平等につながる本学らしい取り組みの推進が期待される研究領域です。

No ユニット名 重点研究分野 詳細
No2023-1 ユニット名“動きの癖”を捉える運動機能検診プロジェクト 重点研究分野①医療と情報技術・データサイエンス

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No2023-2 ユニット名ジェンダー・ストラクチャー研究ユニット 重点研究分野④女性の歴史を学び、女性の未来を考える

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No2023-3 ユニット名早期PAD実現のための研究ユニット 重点研究分野①医療と情報技術・データサイエンス

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No2023-4 ユニット名京都の持続可能性研究ユニット 重点研究分野②持続可能な共生社会~京都再生を中心として~

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No2023-5 ユニット名HIKARI
~慢性閉塞性肺疾患患者の未来に”ひかり”をともす研究ユニット~
重点研究分野③こころとからだ

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No2023-6 ユニット名こころとからだのストレスケアユニット 重点研究分野③こころとからだ

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No2023-7 ユニット名海外と日本文化 重点研究分野②持続可能な共生社会~京都再生を中心として~

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No2023-8 ユニット名ファブスペース活用 重点研究分野①医療と情報技術・データサイエンス

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“動きの癖”を捉える
運動機能検診プロジェクト

研究代表者:横山 茂樹(京都橘大学健康科学部理学療法学科・教授)

研究課題名

質的指標を用いた下肢関節運動分析法の開発

重点研究分野

①医療と情報技術・データサイエンス

研究概要

 本研究では、スクワット動作や足踏み動作といった基本的かつ単純な動作特性から、スポーツ障害や転倒のリスク判定につながる動作分析システムの構築を目指す取り組みです。
 これまでの動作分析法では、高額な装置を用いて関節角度といった量的指標による研究報告が多い現状です。近年、動作の変動性や協調性といった質的指標の重要性が指摘されています。質的指標とは、空間的要因と時間的要因を含む4次元化された指標であり、連続動作の運動パターンやリズムを評価することによって、“動きの癖”を把握できる質的な運動機能評価指標を明らかにします。この評価法を確立することによって、“動きの癖”から生じる慢性疼痛の原因解明にもつながることが期待できます。

研究目的・意義

 本研究では、歩行やスクワットといった基本動作(ヒトの動き)における運動特性(動きの癖)を評価する方法として、関節運動の変動性や協調性の質的指標を用いて運動パターンやリズムの解析方法を開発することを目的とします。
 測定方法は、光学式カメラおよび3軸加速度計を利用した解析装置を用いて、量的指標と質的指標のデータを計測します。対象は、若年者から高齢者および変形性膝関節症患者を有する者として、全身運動における“動きの癖”を評価できる指標の開発を進めます。
 この成果によって、運動器疾患の早期発見に有効な基準値づくりを目指します。さらには病院・診療所をはじめ健康増進施設(フィットネスクラブ)や小・中学校において、運動機能検診システムの構築に繋げることを達成目標とします。

研究背景(重点研究分野選択理由)

 リハビリーテーション領域において歩行をはじめ動作分析法は、治療の効果判定や高齢者の転倒リスクを評価する重要な方法です。しかしながらこれまでの動作分析法では、高額な測定装置を用いて関節角度やモーメントといった量的指標が中心であり、機器や空間的要素などの測定環境が限定されます。このような中で近年、安価で簡便に測定できる加速度計などのWearable機器を用いた動作分析法が進歩しており、歩行周期時間の変動性を指標として転倒リスクを予測できることが報告されています。さらには加速度計を利用して関節角度の計測も可能となっている現状にあります。しかしながら、加速度計を利用した動作解析法では、関節運動の範囲などの空間的因子の指標に関する信頼性・妥当性は明らかではありません。
 関節運動の時間的・空間的因子を評価することは、“動きの癖(異常な関節運動の特性)”を把握でき、運動器疾患の予防・再発防止にあたって重要です。特に運動器疾患に繋がりやすい異常運動を観測する上では、連続動作時における変動性や関節運動の円滑性を計測する必要があります。しかしながら連続動作における関節運動の指標を解析する上で膨大なデータ処理を必要とすることから、いかに簡便かつ迅速に分析できるか?という点が研究遂行上、大きな課題です。
 そこで本研究では、医療分野と情報工学分野の専門家が連携することにより、臨床現場で活用できる“動きの癖”の評価システムの構築を目指します。具体的には、足踏み動作やスクワット動作といった基本的動作を課題として、連続動作時における関節運動の変動性や円滑性の指標を検証していきます。

研究計画・方法

2023年度

[研究Ⅰ]身体運動における”動きの癖”指標に関する基礎的研究
 加速度計を利用した動作解析法の信頼性・妥当性を検証することを目的として、健常者を対象に光学的動作分析装置と加速度計を用いた動作解析装置におけるデータの比較を行います。特に下肢関節を中心に関節運動の質的指標として関節運動の変動性や協調性について検証します。
 対象は、小・中学生20名~健常成人20名、計40名(予定)とします。実施場所は京都橘大学優心館5階実験室において実施します。
 測定機器は光学的ビデオカメラ(OPTITRACK社製)6台を用いた動作解析装置と、3軸加速度計5個を利用した下肢関節運動解析装置(ATR-production)を使用します。測定指標として、量的指標として下肢関節角度、質的指標として、①膝関節屈曲角度および膝内外反角度とその変動係数、②膝最大伸展位(立位)から最大伸展位までの1動作に要する時間とその変動係数を算出します。
 課題動作として、運動課題は、①スクワット運動、②足踏み運動とします。

[研究Ⅱ]変形性膝関節症(膝OA)患者における”動きの癖”指標と臨床所見との関連性に関する応用研究
 膝OA患者を対象として、基本動作における質的指標と変形・疼痛の程度や歩行能力といった臨床所見と関連性を検証します。これによって膝OAにおいて関節運動の変動性や協調性の指標が臨床症状と関連していることを証明します。対象は、整形外科クリニックで膝OAの診断を受けた者40名とします。方法は、[研究Ⅰ]に準じて実施します。さらに疾患に関する所見について調査します。

2024年度

[研究Ⅲ]運動器検診としての”動きの癖”指標に関する応用研究
 基礎研究で得られた情報を基に、中学生(もしくは小学生)を対象として、基本動作における”動きの癖”指標を時間的・空間的因子から分析し、柔軟性や筋力といった身体機能との関連性を検証します。これによって“動きの癖”指標と子どもの運動能力低下や運動器疾患(側弯症など)との関連性を証明します。方法は、[研究Ⅰ]に準じて実施します。併せて柔軟性や筋力などの体力測定を実施します。

期待される研究成果および地域・社会への発信

 本研究成果は、理学療法学や情報工学などの専門領域における学会発表・論文投稿を行うとともに、大学HPなどを活用して公表する予定です。さらには本学ユニットとして、地域の教育委員会や健康増進施設、医療機関を対象に情報を発信します。さらにはこれらの施設と連携して、“動きの癖(関節運動の特性)”の指標とした運動機能評価システムの利用・導入を目指して、中学校における運動器検診への活用、健康増進施設における障害予防教育、医療施設(整形外科クリニックを中心)における障害再発予防に向けた運動機能評価体制の構築に取り組みたいと考えています。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

活動状況

活動日

2023年4月1日 ~ 2023年8月10日

活動内容

身体(からだ)の痛みは、さまざまな原因があります。その一つに身体の使い方、言い換えると“動きの癖”が原因となっていることがあります。例えば、腰を曲げた姿勢で長時間座っていると、腰痛を引き起こすことになります。これは身体の使い方の“癖”によって腰痛になりやすい人とそうでない人が決まってきます。
本ユニットでは、膝関節に着目して歩行動作時に類似した足踏み動作時における“動きの癖”を指標化する取組を行ってます。現在は、変形性膝関節症患者を対象に15名ほどデータ収集を行っており、体重を支えている場面における膝関節の側方への動揺や下腿の傾きが膝関節にどのような影響を与えているのか?検証しています。
これまでの結果から、変形性膝関節症患者では下腿の外側傾斜の角度のばらつきが大きいと、疼痛も強くなる傾向が窺われています。今後は、これらの指標の標準化を進めて、よい膝関節の使い方の判定基準を探っていく予定です。

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名横山 茂樹 所属京都橘大学健康科学部理学療法学科 職位教授
氏名吉田 俊介 所属京都橘大学工学部情報工学科 職位教授
氏名秋本 剛 所属杉之下整形外科クリニック 職位理学療法科主任

ジェンダー・ストラクチャー
研究ユニット

研究代表者:村上 裕道(京都橘大学文学部歴史遺産学科・教授)

研究課題名

ジェンダーの構造を考える―本学学生に見る専門職能意識とジェンダーの萌芽―

重点研究分野

④女性の歴史を学び、女性の未来を考える

研究概要

 女性歴史文化研究所における本研究「ジェンダーの構造を考える」は、全学横断的な文理融合的視点から推進する研究です。
 本学において職能に関する教育を受け、一見、男女の性差のない条件の下、職業に就く専門職においても、女性の方が離職・転職等の割合が多いことが知られており、専門職におけるジェンダーに関する構造的課題を究明し、改善策について提言するものです。

研究目的・意義

 ジェンダーは、男女の性差が社会的な差に単純に反映されるだけではなく、男性も含めた社会的構造のゆがみが強調されて女性に集約される傾向があります。大学において職能に関する教育を受け、一見、男女の性差のない条件の下、職業に就く専門職においても、女性の方が離職・転職等の割合が多いことが知られています。本学においても、国家資格を取得し、教師・建築士・看護師等、専門職として業務に従事する職能を選択している者や公務員等に就く者が多数います。
 しかし、彼らが大学において専門職を目指し始めた時点から卒業後の状況までについて、社会的な構造のゆがみがどのように影響を与え、中途離職や転職等の判断にいたっているのか、長期的な視点からの調査は未だ行われていません。 
 本研究では、男女学生が専門職を目指し始めた初期の段階から、専門職として就職し、そして、年齢を重ねてリタイヤするまでの様々な人生の段階において、社会的な構造のゆがみとその影響について研究するものです。さらに、個別専門分野の特徴的な事象を通して、その分野において特徴的なジェンダーの「構造」、またはその「構造」が生み出す社会的な課題であるジェンダー(格)差を具体的に明らかにします。目標として、制度の改善への提言に加え、大学における教育課程において、ジェンダーを生み出す構造の改善につながる知見と感性の涵養を図ります。

研究背景(重点研究分野選択理由)

 本学では、これまで文学部を中心として女性歴史文化研究所を運営し、女性史について研究を重ねてきました。しかし、近年では、本学の規模も大きくなり、総合大学として各種の研究を実践するところとなり、女性史研究所としても文理融合的視点からの研究課題が望まれるところとなってきました。
 そのため、研究員の所属学部を拡大し、これまでの研究アプローチを尊重しつつも大学共通の課題に取り組むこととし、女性歴史文化研究所における全学横断的な長期的研究課題として「ジェンダーの構造を考える」を据えたところです。そして、研究の進展に合わせて、女性歴史文化研究所の主体的研究に位置付けて研究を伸展する予定です。

研究計画・方法

 女性歴史文化研究所における全学横断的な長期的研究課題として「ジェンダーの構造を考える」を据え、研究副題を設定して2か年1クールの計画的な研究に取り組みます。
 今回は、その本格的な研究の開始に向け、2年間の基礎的な研究を行うこととし、基礎的研究の後には、女性歴史文化研究所の主体的研究と位置付けて研究を展開することとしたい。2023年度の基礎的研究の期間においては、「1.研究体制」および「2.調査手法」の確立を目指します。なお、適宜、科学研究費助成事業等の外部資金獲得を目指して、研究を継続する計画です。

期待される研究成果および地域・社会への発信

 研究成果については、女性歴史文化研究所が発刊する研究所紀要や広報誌『クロノス』、あるいは他の学会誌等に掲載の計画をしています。また、研究成果の最終的な活用方策として、教育プログラムに反映し、どのように学生に還元するか、今後検討の予定です。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

活動状況

活動日

2023年9月19日

活動内容

本研究では学生の専門職としてのキャリアにおけるジェンダー(格)差の影響に関する研究調査を目的とし、2024年度までの基礎的研究においては、研究体制の確立とともに、看護学部学生へのアンケート調査を通じて調査手法の確立を目指しています。
本年度の活動は、3つを計画しております。1つは、主要なテーマであるアンケート調査の準備及び倫理委員会の許可の取得、2つは、アンケートの実施、そして、3つは、情報工学科の協力を得てのアンケートの分析であります。
本年5月17日に第1回会議を開催。以降、協議を重ね、本日の第8回会議において、第1段階の倫理委員会への申請手続までを作成したところです。
なお、7月25日には、ジェンダー研究者の大澤真理先生(元東京大学社会学研究所長)をお迎えし、「ジェンダー研究の現状と論点」と題して特別研究(講演)会を開催いたしました。また、研究人数も8名に増強してきたところです。

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名村上 裕道 所属京都橘大学文学部歴史遺産学科 職位教授
氏名竹内 直人 所属京都橘大学経済学部経済学科 職位教授
氏名那須ダグバ 潤子 所属京都橘大学看護学部看護学科 職位准教授
氏名中久保 辰夫 所属京都橘大学文学部歴史遺産学科 職位准教授
氏名山内 由賀 所属京都橘大学文学部歴史学科 職位専任講師
氏名加藤 諒 所属京都橘大学工学部情報工学科 職位専任講師
氏名小西 奈美 所属京都橘大学看護学部看護学科 職位専任講師
氏名伊藤 弘子 所属京都橘大学看護学部看護学科 職位専任講師

早期PAD実現のための研究ユニット

研究代表者:関根 和弘(京都橘大学健康科学部救急救命学科・教授)

研究課題名

病院外心停止(OHCA)に対する、バイスタンダーによる早期除細動実現に関する研究

重点研究分野

①医療と情報技術・データサイエンス

研究概要

 自動体外式除細動器(以下、AED)を用いた早期除細動は、心停止傷病者を救命するうえで重要です。AEDの適正配置のガイドラインでは、心停止から5分以内の除細動が有効であると言われています。我が国では、多くのAEDが普及し、各所に設置されています。しかし、AEDマップ等は新たに設置されたAEDが登録されていないなど、更新されていないものも多く、緊急時にAEDを見つけ出し、早急に使用することは必ずしも容易とは言えません。そこで本研究ユニットでは、現在設置されているAEDとAEDマップの相違についての検討を行い、問題点の抽出と改善案を算出し、AEDの早期発見と早期除細動の実現を成果達成目標とし検討を行います。

研究目的・意義

 AEDを用いた早期除細動は、心停止傷病者を救命するうえで重要です。AEDの適正配置に関するガイドラインでは、心停止から5分以内の除細動が有効であると言われています。心停止患者が発生した場合は、その場に居合わせた一般市民(bystander)が胸骨圧迫心臓マッサージと早期に除細動をすること(Public Access Defibrillation:以下、PAD)が重要です。我が国では多くのAEDが普及し、公共施設・商業施設や学校などに設置されており、AED設置の案内表示板やAEDマップを各自治体が作成するなど、一般市民に周知する取り組みを行っていますがAEDマップ等は新たに設置されたAEDが登録されていないなど、最新バージョンに更新されていないものも多いため、緊急時に近くのAEDを見つけ出し早急に使用することは必ずしも容易とは言えません。
 そこで本研究ユニットでは、現在設置されているAEDとAEDマップの相違についての検討を行い、問題点の抽出と改善案を算出し、AEDの早期発見と早期PADの実現を成果達成目標とし検討を行います。改善策を見出し常に最新バージョンのAEDマップとなり迅速なAEDが可能となり救命率の向上に寄与するものと考えます。

研究背景(重点研究分野選択理由)

 我が国で多くのAEDが普及し、公共施設・商業施設や学校などに設置され、AED設置の案内表示板やAEDマップを各自治体が作成するなど、一般市民に周知する取り組みを行っています。しかし、AEDマップ等は新たに設置されたAEDが登録されていないなど、最新バージョンに更新されていないものも多く、緊急時に近くのAEDを見つけ出し、早急に使用することは必ずしも容易とは言えません。
 傷病者が発生して119番をして、救急隊が現場到着するまで約9.4分(R3年救急救助の現況)のレスポンスタイムがあります。傷病者の元にはさらに2‐3分の時間を要します。救急隊が除細動実施をするまでに119番の覚知から10-12分程度を要してしまいます。救急隊の増隊や119番通報システムが向上したとしても、AED実施まで目標の5分という壁を破ることは難しいです。そのため、市民によるPADの実施が、効果が高く有効ですが、AEDマップの更新がない限りAEDマップは単なる古い地図にしかなりません。そのため、Digital Transformation(以下、DX)や情報工学に詳しい情報工学科とユニットを連携しました。各組織が作成したAEDマップの確かさを確認・評価し、web上で更新が簡単に可能なのか研究し課題の抽出を行います。

研究計画・方法

2023年度

  • 4月~5月:先行研究調査
    国内外の先行研究を調査し、現時点での課題等を発見します。
  • 5月~10月:現地調査
    京都市山科区内のAED設置場所と、京都市AED設置施設検索システムに掲載されているAED情報に差異がないか実際に足を運び現地調査を行います。調査項目は以下の通りです。
    • 実際に設置されているのか、常時使用可能なのか、持ち出しは可能なのか。
    • 登録情報との差異はないか(使用可能時間や詳細な設置場所など)
  • 10月~11月:問題点・課題の抽出
    4月からの先行研究調査と5月からの現地調査の結果から、早期PAD実現の弊害となっている問題点および課題の抽出を行います。
  • 12月~3月:早期PAD実現のためのシステムの考案
    上記で挙がった問題点および課題から、改善点を検討します。その際、病院前救護だけでなく、情報技術分野の視点からも改善点を検討し、早期PAD実現のためのシステムを考案します。

2024年度

  • 4月~7月:システムの実装、データ解析
    上記で考案したシステムと、従来のシステムでAED実施までに要する時間の比較検討を行います。比較項目は以下の通りとします。
    • AED発見までに要した時間
    • AED使用開始までに要した時間
    • AEDを取得するのに要した距離
    被験者は未定ですが、バイアスがかからないようランダム化して試験を実施します。
    これらで得たデータを解析し、早期PADが実現可能か検討をします。
  • 8月~10月:データ整理
    これまでに得られたデータを整理し、論文執筆、学会発表に向けての準備を行います。
  • 11月~3月:論文執筆、学会発表
    論文執筆ならびに学会発表の準備を行います。
    なお、論文投稿先ならびに発表する学術集会は未定です。

期待される研究成果および地域・社会への発信

 各組織は、AEDマップやAED案内図などの作成を実施しています。しかし、AEDマップなどは新たに設置されたAEDが登録されていないなど、最新バージョンに更新されていないものも多く、緊急時に近くのAEDを見つけ出し、早急に使用することは必ずしも容易とは言えません。
 そこで本研究ユニットでは、現在設置されているAEDとAEDマップの相違についての検討を行い、問題点の抽出と改善案を算出し、AEDの早期発見と早期PADの実現を成果達成目標とし検討を行います。改善策を見出し常に最新バージョンのAEDマップとなり、迅速なAED実施が可能となるため救命率の向上に寄与するものと考えます。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

活動状況

活動日

2023年9月9日

活動内容

一般市民による早期除細動(AED:Automated External Defibrillator) のことをPublic Access Defibrillation(以下、PAD)といい2005年にはPADの実施率が1.1%であったものが2013年には16.5%まで増えています。このPADをすぐに使用できるAEDの配置地図(以下、PADマップ)が山科区内で3種類(日本AED財団、日本全国AEDマップ、京都市HP)存在します。このPADマップをweb上に各々のAED配置をマッピングしました。
AED配置をマップに重ねたところAED配置がずれていることが確認できました。さらにAEDの設置状態を現地で目視により確認しています。AEDが配置され年月が経過していることもあり、AEDの電池切れや本体が無い箇所も存在しています。一般市民が直ぐに使用できるPADマップの更新が不可欠です。そのためにはPADマップの現状を確認することが早期PADの鍵になると考えます。

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名関根 和弘 所属京都橘大学健康科学部救急救命学科 職位教授
氏名吉田 俊介 所属京都橘大学工学部情報工学科 職位教授
氏名片岡 祐介 所属京都橘大学工学部情報工学科 職位准教授
氏名郷田 爽真 所属京都橘大学健康科学部救急救命学科 職位助手
氏名斎藤 汐海 所属京都橘大学健康科学部救急救命学科 職位助手
氏名杉木 翔太 所属京都橘大学健康科学部救急救命学科 職位客員研究員

京都の持続可能性
研究ユニット

研究代表者:岡田 知弘(京都橘大学経済学部経済学科・教授)

研究課題名

京都における地域経済・社会の持続的発展に関する研究

重点研究分野

②持続可能な共生社会~京都再生を中心として~

研究概要

 京都市では、2021年から人口減少が顕著となっています。その減少数は、2年連続で全国1位(市町村)という状況です。また、京都府全体でも同様の傾向が見られます。この事実は、京都経済や社会の持続的な発展に疑問を投げかけています。このまま、現役世代の人口流出(社会減)、そしてさらに高齢化が進むと、農林業、地域の産業基盤、中小企業・小規模事業者の経営、地域コミュニティ、観光、学術・文化の維持・発展に重大な影響を及ぼすと考えられます。京都で何か起こっているのか、その実態を解明し、京都の持続的な発展に向けた道筋を示すことが緊急の課題となっています。本研究ユニット(持続可能な共生社会~京都再生を中心として)では、京都の経済・社会の現状や課題を京都府・京都市行財政、中小企業、地域経済、農林業、観光、子育て、医療(看護)・福祉、各種政策など、複数の学術的視点から明らかにし、課題解決に向けた研究基盤の整備や枠組みづくりを進めていきます。

研究目的・意義

 本研究ユニット設立の目的は、岐路に立つ京都経済・社会の実態を学際的に分析し、持続可能な地域経済の形成に向けた課題を明らかにし、長期的な視点から地域再生への道筋を示すことにあります。京都は南北に長く、海・山・平野に囲まれた多様な地域、そして歴史、文化、経済構造を有しています。そのため、各地には伝統産業や伝統文化、地域コミュニティが各地に残り、それが「京都の魅力」となってきました。しかし、時代とともに伝統産業の担い手が減少し、産業の空洞化や農林業の衰退が進むなかで、少子化と高齢化が急激に進んでいます。現役世代の域外流出も進んでおり、経済のグローバル化が加速した1990年代以降、京都経済・社会は大きく変容しています。その結果として、地域を支える中小企業・小規模事業者の活力低下、中心市街地における住宅価格の上昇による人口流出が進み、地域コミュニティの崩壊も進んでいます。このような状況は、京都市に限ったことではなく、京都府内の各地域が抱える共通の課題となっており、地域の持続的発展が問われているだけでなく、災害や経済危機発生時に対する対応力や復元力が問われています。本研究ユニットでは、京都を取り巻く課題に対して、京都府・京都市行財政、中小企業、地域経済、子育て、看護、農林業、観光など多角的な視点から検討をくわえ、持続的可能な京都経済・社会に向けた課題解決枠組みの構築を進めます。本研究プロジェクトは、経済学、経営学、看護学を専門領域として持つ、研究者が集結していることが特徴であり、これら複数の研究領域には、京都再生への共通課題を潜んでいるとの共通認識を持っています。また、必要に応じ学内外の専門家を加えることも検討しています。経済政策、産業政策のみならず、地域経済を支える子育て、看護、さらには観光やまちづくりと言った領域からのアプローチを加えることで、京都経済・社会を1つの「エコシステム」として捉えるという学術的独創性と創造性を有しています。

研究背景(重点研究分野選択理由)

 京都はこれまで、幾多の災害や戦災に巻き込まれながらも、力強く発展を遂げてきました。しかし、近年における人口減少は、少子化・高齢化に伴う自然減だけでなく、現役世代や子育て世代の転出超過(社会減)によってもたらされており、京都経済・社会の活力が大きく低下する要因の1つとなっています。また、経済活性化対策として行われているさらなる観光振興や都市計画規制の緩和などの地域政策は、必ずしも京都経済・社会の活性化に寄与しているとは言えず、学術的な観点から検証していく必要があると考えられます。人口減少そしてグローバル化のなかで岐路に立つ京都経済・社会について、学際的視点から実態を明らかにし、課題を明確化することによって、地域経済・社会の持続的な発展に向けた方策、京都経済の将来像を示すことが、京都の未来を創ることに繋がることから、当該分野を重点研究分野として選択しています。

研究計画・方法

 まず、本研究ユニットでは、京都経済・社会を学際的に、かつ長期的に研究することのできる体制づくりを主眼に置き、プロジェクトを進めて行きます。

【2023年度研究計画】
京都経済・社会における重点研究課題の洗い出しと絞り込み

 2023年度においては、まず、ユニットメンバーが各専門分野から京都経済・社会における課題を持ち寄り、研究会等を通じて検討を行うことで、研究対象の絞り込みを行いますが、立ち上げ時のユニットメンバーの構成に鑑み、重点調査・研究領域を地域経済、中小企業、子育て、看護、観光、まちづくりから検討をします。研究手法については、各メンバーの専門性を生かしながら先行研究のサーベイ、統計分析を中心に進めていきます。また、適宜、国内外における先進事例調査や行政、実務家などへのヒアリング調査、学外研究者との連携を行うことで、京都経済・社会の現状分析を深めていきます。

【2024年度研究計画】
研究成果のさらなる蓄積とユニットメンバーの拡充

 2024年度においては、前年度に設定した研究課題を再検討すると同時に、研究成果のさらなる蓄積を図ります。また、調査・研究を進めるなかでユニットメンバーを拡充することも考えています。研究手法については、各専門分野からの先行研究、先進事例調査、実務家などからのヒアリング調査にくわえ、学際的視点から分析視角の融合を進め、各スタッフの専門分野だけでは明らかにできなかった部分への接近を目指します。この調査・研究活動によって、京都再生に向けた中核的なプロジェクトを本学研究者が担うことができる体制構築を目指していきます。

【2025年度以降の研究計画】
自立的な研究プロジェクトの形成

 ユニット設置3年目となる2025年度においては、研究交流やワークショップの「場」としての位置づけから、ユニットメンバーを中心とした具体性のある研究プロジェクトへの拡充を進めます。その際、競争的資金や民間助成金申請の可能性を探ると同時に、産官学連携の推進を進め、京都経済・社会研究の中心的役割を担うことのできる枠組みづくりを目指します。また、研究ユニットのさらなる発展性が期待できる場合、複数年単位での調査・研究プロジェクトが実施・継続されている場合は、研究ユニット設置を継続することも検討していきます。

期待される研究成果および地域・社会への発信

 本プロジェクトでは、研究ユニットの設置を出発点として、短期的な個別課題を解決するプロジェクトに留まらず、京都の経済・社会における課題を長期的かつ包括的、分野横断的視点から検討することのできる枠組み(プラットフォーム)づくりを目標としています。そのため、ユニットのメンバー、研究領域も必要に応じ追加し、研究内容の豊富化を持続的に追求していくことを予定しています。本ユニットの目指す研究成果については、人口減少に象徴される京都の持続可能性をめぐる課題を中心として、多角的に分析することによって、経済・社会構造の特質と政策課題を学際的に明らかにし、京都の社会経済の現状分析から導きだされる政策提言や将来像等を、随時発表していきたいと考えています。具体的な研究成果として、調査報告書の作成・公表、シンポジウムの実施、学会・研究会などでの報告、論文発表、書籍の出版などを想定します。学術界に留まらず、地域、市民社会へと研究成果を還元していくことで、多くの方に研究ユニットでの取り組みを知ってもらえるよう努めていきたいと考えています。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

活動状況

活動日

2023年5月18日

活動内容

ユニット・メンバーの初顔合わせの会議を開き、代表者から、研究ユニット制度の概要や本ユニットの研究目的、研究計画について、申請書に基づいて報告し、予算の使用方針についても、了解を得ました。
続いて、メンバー各人の自己紹介を、これまでの研究の内容や、本ユニットで取り組んでみたい研究課題をだしてもらいながら、行いました。
最後に、今後のおおよその研究会としての計画について、話し合い、次回までにそれぞれが、本ユニットに関わる研究課題を考え、研究会でその内容を報告してもらい、議論を通して問題意識の共有をはかることにしました。

活動日

2023年7月27日

活動内容

第2回の研究会は、全員参加で行い、各人が準備したレジュメに基づき、本ユニットで取り組みたい研究課題を報告し、討論しました。
討論のなかで、京都市の人口減少問題について、共通の関心が集まり、保育園、幼稚園から学齢期における学童保育問題について、行財政分野での政策検証とともに、新たな民間事業の展開にも注目し、それとこどもの食事を含む広い意味での子育て環境、若い親たちの働く場、大学との地域連携との関係性などで共通のテーマを設定できるのではないかという議論になりました。
今後、晩秋から冬にかけて、これらの問題を中心に専門家や実務家を招いての公開研究会、あるいはシンポジウムを開くことも検討することにしました。

活動日

2024年2月28日

活動内容

京都市の現役世代の人口流出に伴う子どもの減少は、経済・社会の持続的な発展に大きな影響を及ぼすと考えられています。これまでの研究会において、多角的な視点から子育ておよび保育問題について活発な議論が交わされ、外部の専門家を招聘した研究会の開催を企画することになりました。そこで今回の研究会では、「子どもの貧困」に焦点をあて、本テーマを取り巻く社会的動向や政策状況に理解を深め、今後の研究活動の推進に向けた分析の視角を深化させるため、このテーマの第一人者である東京都立大学子ども若者貧困研究センター長の阿部彩教授を招聘し、研究会と意見交換会を開催しました(於:TKPガーデンシティ京都タワーホテル・ミーティングルーム4I)。
まず、阿部氏より「こども・若者の貧困問題と地域社会の持続可能」について報告がなされました。日本の相対的貧困の歴史的推移と属性別の傾向、子どもの貧困は健康・栄養・学力・学校生活・心理など幅広いWell-beingに影響することなどが示され、貧困の連鎖や政策的取り組みにいたるまで、理解を深めることができました。続いて行われたディスカッションでは、子どものフード・インセキュリティ、地域における貧困の把握方法、政府の貧困政策、子育て世代の負担、教育水準の高い地区の発生と分断、さらに実態調査の動向や方法論など、子どもの貧困にまつわるグローバルかつローカルな文脈での多様な質疑が盛んに交わされるとともに、調査方法に関するインプリケーションが得られるなど、充実した研究会となりました。今回の研究会の成果をもとに、今後は、具体的な調査研究の設計を議論していく予定です。

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名岡田 知弘 所属京都橘大学経済学部経済学科 職位教授
氏名小山 大介 所属京都橘大学経済学部経済学科 職位准教授
氏名那須ダグバ 潤子 所属京都橘大学看護学部看護学科 職位准教授
氏名平賀 緑 所属京都橘大学経済学部経済学科 職位准教授
氏名前田 一馬 所属京都橘大学経済学部経済学科 職位専任講師
氏名大田 雅之 所属京都橘大学経営学部経営学科 職位助教
氏名吉岡 久恵 所属京都橘大学経済学部経済学科 職位客員研究員

HIKARI
~慢性閉塞性肺疾患患者の未来に”ひかり”をともす研究ユニット~

研究代表者:堀江 淳(京都橘大学健康科学部理学療法学科・教授)

研究課題名

慢性閉塞性肺疾患患者に対する低頻度、包括的介入のこころとからだへの効果検証

重点研究分野

③こころとからだ

研究概要

 病状安定期慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)患者は、身体機能のみでなく、うつや不安状態に陥ることは先行研究から明らかとなっています。COPD患者は、「からだ」と「こころ」の障害により、閉じこもりがちな生活となり、QOLも低下していきます。そのようなCOPD患者に対し、我々ユニットが日常生活に光をともしたいとの思いから研究ユニット名を「HIKARI」としました。
 本研究では、COPD患者に対して、「こころとからだ」に如何なる関連があるのかを検証します。更に、その結果をもとに、「外来」「低頻度」「包括的」をキーワードとした介入プログラムを開発し、「こころとからだ」にプラスの効果をもたらすかを、横断研究と2年間の縦断研究として客観的に検証します。

研究目的・意義

研究目的

 病状安定期慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)患者に対して、「こころとからだ」に如何なる関連があるのかを検証することです(横断研究)。更に、その結果をもとに、「外来」「低頻度」「包括的」をキーワードとした介入プログラムを開発し、「こころとからだ」にプラスの効果をもたらすかを客観的に検証することです(縦断研究)。

研究意義

 呼吸リハビリテーションは、「からだ」に障害が生じたCOPD患者の息切れや運動耐容能を改善させる、あるいは「こころ」に障害が生じたCOPD患者のうつや不安を改善することは明らかとなっています。しかしながら、その両者の関連については十分明らかになっていません。本研究では、それら「こころ」と「からだ」の関連を客観的に検証することができます。また、その結果から、COPD患者に対する「外来」「低頻度」「包括的」をキーワードとした呼吸リハビリテーションの効果を検証することから、「外来」「低頻度」「包括的」呼吸リハビリテーションの有用性を社会に発信、啓発することができます。

研究背景(重点研究分野選択理由)

 呼吸リハビリテーションのステートメントにおいて、呼吸リハビリテーションは「シームレスな介入である」と定義されています。しかし、医療機関で「シームレスな介入」が行われている施設は少なく、日本の医療制度上、医療機関、いわゆる病院での継続は困難であり、クリニック、あるいは介護保険領域の施設での継続が必要であると考えます。加えて、その継続は、低頻度である必要があります。本研究では、前述したように「こころとからだ」に焦点をあて、「外来」「低頻度」「包括的」呼吸リハビリテーションプログラムを開発し、その効果を客観的に検証します。特に、「外来」「低頻度」「包括的」「こころとからだ」に焦点を当てた先行研究はほとんどなされていません。

研究計画・方法

研究期間

2023年4月から2025年3月(全体期間2026年3月)

研究デザイン

病状安定期外来COPD患者による「こころとからだ」の関連を検証する横断研究と、その結果ら開発する介入プログラムの効果検証のための前向き縦断研究

研究セティング

NPO法人はがくれ呼吸ケアネット登録クリニック(かとうクリニック、渡辺医院、石井内科、薬師寺医院)の診察室、およびリハビリテーション室

対象

病状安定期外来COPD患者(年齢、性別、重症度、呼吸機能不問)
除外対象者:COPD以外の呼吸器疾患を有する者、肢帯機能障害により歩行が障害されている者、重篤な内科的合併症を有する者、認知症を有する者、その他、担当医師により研究参加が不適切と判断する者
目標対象数:120名
算出根拠:サンプルサイズ120名(効果量0.5、有意水準5%、検定力0.8で算出)、および研究参加施設の外来通院中のCOPD患者数より算出

評価項目

一般情報:年齢、身長、体重、BMI、合併症、栄養状態、血液ガス、血液・生化学検査、胸部X線、気管支拡張剤の種類、1年間 の急性憎悪回数、入院回数
こころ:精 神・心理機能;ストレス反応、抑うつ、認知機能、前頭葉機能
からだ:四肢筋力、 体組成、呼吸筋力、運動耐容能、活動量計による身体活動量
社会背景:職業、喫煙、飲酒、家族構成、住宅環境、車の使用、運動習慣

期待される研究成果および地域・社会への発信

 研究成果は、学術大会、論文にて公表します。併せて、その結果をホームページ、研修会、患者勉強会を通じて社会に発信します。呼吸リハビリテーションに従事する医師、看護師、その他医療関係職種は多数存在します。本学が安定期COPD患者に対する研究を積極的に行っていることをアピールすることができます。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

活動状況

活動日

2023年9月27日

活動内容

病状が安定している外来慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)患者さんを対象に、「外来」「低頻度」「包括的」をキーワードとした介入プログラムを行っています。分析は、「こころとからだ」に視点をおいて、それらの相互関係について調べています。
現在、COPD患者さんを主に呼吸器の病気を持つ20名の患者さんのデータをとっています。「からだ」については、筋力、筋肉量、全身持久力、身体活動量などのデータをとっています。「こころ」については、生きがい、認知機能(軽度認知障害含む)、生活の質、病期についての知識などでデータをとっています。この後、6か月、1年後・・・と継続してデータをとっていきます。
患者さんには、検査結果もとに、自分で病気や身体の管理ができるようにアクションプランを一緒に考え、自宅で実施してもらっています。加えて、低頻度(月1回)、外来で通院してもらい指導を続けています。多くの患者さんが、しっかりと頑張ってくれています。

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名堀江 淳 所属京都橘大学健康科学部理学療法学科 職位教授
氏名小山 智史 所属京都橘大学看護学部看護学科 職位准教授
氏名田中 芳幸 所属京都橘大学総合心理部総合心理学科 職位准教授
氏名原田 瞬 所属京都橘大学健康科学部作業療法学科 職位専任講師
氏名武田 広道 所属京都橘大学健康科学部理学療法学科 職位助教

こころとからだの
ストレスケアユニット

研究代表者:大久保 千惠(京都橘大学総合心理学部総合心理学科・教授)

研究課題名

身近にできるストレスケアの効果についての生理学的・心理学的効果の検討

重点研究分野

③こころとからだ

研究概要

 看護技術の一つである「タッチケア」にはリラックス効果や幸せホルモンとも呼ばれているオキシトシンを増加させる効果があるとされています。本研究では、「タッチケア」の「からだへの効果」を侵襲性が低い唾液を用いて測定し、心理的指標を用いて「こころへの効果」を測定します。まず、大学生のストレスケアを目的に調査を開始し、専門家によるケアだけではなく、学生同士や自分自身でできる「タッチケア」について検討します。その後、子ども、おとな、何らかの疾患を抱えている方に対象を広げ、「タッチケア」に加えて「運動」や「笑い」などの効果についても検討をし、日常的に身近にできる「からだとこころ」のケアについて科学的な根拠を示していきたいと考えています。

研究目的・意義

 本研究の目的は2つです。①唾液アミラーゼ活性・唾液コルチゾール濃度・唾液オキシトシン濃度について、健常群・高ストレス傾向群・神経発達症傾向群別の違いについて検討します。また、自閉スペクトラム(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)などの神経発達症の傾向と修学上の困難さとの関連性について検討を加えます。②日常的に実施が可能である「タッチケア」の効果について唾液を用いた生理学的指標および心理学的指標を用いて明らかにします。
 これらの成果が得られることにより、大学生における神経発達症傾向がある学生やストレスレベルが高い学生に対してエビデンスに裏打ちされた日常的なケアの方法を提示することができる可能性があると考えられます。これまでの研究では、侵襲性が高い血中オキシトシン濃度の測定によるものがほとんどでありましたが、本研究では侵襲性の低い唾液オキシトシン濃度を用いることに独創性があります。
 また本研究は、将来的に対象者を子ども、成人、高齢者、さらに臨床群などに広げていくこと、タッチケアについては、専門家によるケア→ピア・ケア→セルフケアという方向性で身近なものにしていくこと、日常的に実施可能なケアの種類については、運動、遊び、笑いなど種類を拡大して検討を加えていくことを視野に入れた萌芽的研究としての位置づけにあります。したがって、段階的、継続的に研究を行っていくことで、幅広い対象に有効な身近なケアを提案できる成果を得られる可能性がある点に本研究の意義と独創性があると考えられます。

研究背景(重点研究分野選択理由)

 青年期以降における神経発達症(DSM-5)についての支援の整備の必要性が指摘されています。また、青年期における抑うつなどの精神疾患の増加も指摘されており、特に大学生においては大学生活で困難を抱え、就学継続困難に陥る学生が増加していることからも、ストレスによる大学生活への不適応を来す前の対策を検討することが重要であると考えられます。
 オキシトシンは、精神的な安らぎを与えるといわれる神経伝達物質のセロトニン作動性ニューロンの働きを促進することでストレス反応を抑え、人と交わったりする社会的行動への不安を減少させると考えられています。近年、オキシトシンとASDの関連についての研究が進んでおり、ASD者の血中オキシトシン濃度がわずかに低いことが指摘されています。しかし多くの研究は、血中オキシトシン濃度を測定しており、侵襲性が高いです。唾液オキシトシン濃度は血中オキシトシン濃度と相関するとの報告があり、採血の苦痛を伴わない非侵襲的に採取可能な唾液を用いて測定することには意義があると考えられます。また、ストレスと唾液アミラーゼ活性および唾液コルチゾール濃度についての研究も進められてきていますが、大学生のストレス状態の簡易で客観的な測定指標としての評価は明らかになっていませんでした。そこで本学の内堀・米田・大久保は、2021年度京都橘大学総合研究センター公募型研究助成費を受け、大学生におけるASD傾向およびADHD傾向と唾液中バイオマーカーならびに心理的指標との関連についての調査を行いました。その結果、ASD傾向が高いと不安感が強くなり、コミュニケ―ションにおける問題が大きいほどうつ気分・不全感が高いこと、ADHD傾向が高いと疲労・身体反応、うつ気分・不全感が高いことが見いだされました。また、ASD傾向における想像力の問題が高いと唾液αアミラーゼ活性が低い傾向があり、対人関係の問題は唾液コルチゾール濃度と関連している可能性が見いだされました。そして、ASD傾向のうちコミュニケーションに関する困難が高いと唾液オキシトシン濃度は低いという関連性が見いだされました。しかしながら自覚的な修学上の困難さとの関連や、必要な支援についての検討は不十分でした。
 一方、看護技術の一つである「タッチケア」の効果として、副交感神経活動、脳波α波、オキシトシンの増加などの生理的変化や疼痛や不安軽減などの心理的効果が明らかにされています。またタッチケアを受ける人だけではなく、実施する側の効果も明らかになっています。しかし、いずれも特定の環境下におけるタッチケアの一時的な効果検証に留まり、効果の持続性や、タッチケアをくりかえし受けるあるいは実施することによる心身両側面への影響についての検証は見当たりません。日常生活における様々なストレッサーの蓄積によってストレス反応が生じることからも、日常的に手軽に行えるストレスケアは重要であると考えられます。
 それにより「タッチケア」の効果が明らかにされた場合、大学生のストレス緩和のための一助として「タッチケア」を啓発することにつながります。また、ASD傾向やADHD傾向がうかがわれる学生への支援において、簡易な客観的指標としての唾液バイオマーカー値を用いたエビデンスに裏付けされた支援を開発していくことも可能になるのではないかと考えられます。また、対象者を青年期だけではなく、子ども、成人、高齢者さらに臨床群などに広げていくこと、タッチケアについては、専門家によるケア→ピア・ケア→セルフケアという方向性で検討を重ねていくこと、日常的に実施可能なケアについては、運動、遊び、笑いなどに拡大して検討を加えていくことにより、幅広い対象に有効な身近なケアを提案できる可能性があると考えられます。

 このような目的をもった研究は、重点研究分野「からだとこころ」における看護学科・臨床検査学科・総合心理学科の教員がそれぞれの専門性を活かした研究に該当するのではないかと考えました。

研究計画・方法

2023年度

 大学生40名を対象とし、肩甲骨辺りに両手で触れるタッチケアを行い、タッチケア前後、及びタッチ終了20分後24時間後に質問紙による心理的指標と唾液バイオマーカーによる生理的指標を調査します。調査の流れはFigure1に示しました。

  • 唾液の採取は、Salimetrics Oral Swab <SOS>を使用します。
  • 唾液中アミラーゼ活性の測定はSalimetrics社のSalivary α-Amylase Assay Kitを用います。
  • 唾液中コルチゾール濃度の測定はSalimetrics社のCortisol Salivary Immunoassay Kitを用います。
  • 唾液中オキシトシン濃度の測定はEnzo社のOxytocin ELISA kitを用います。
    心理的指標として、ストレス状態の測定には「Public Health Research Foundationストレスチェックリスト(PHRF-SCL)、ASDの傾向の測定には「AQ日本語版(AQ-J)成人用」、ADHD傾向について評価することを目的として「CAARS日本語版」を使用します。また、気分の測定のためにTDMS-STを内受容感覚の測定のためにMAIA-Jを用います。

2024年度

 大学生40名を対象とし、肩甲骨辺りに両手で触れるタッチケアを行い、タッチケア前後、及びタッチ終了20分後24時間後に質問紙による心理的指標と唾液バイオマーカーによる生理的指標を調査します。

  • 唾液の採取は、Salimetrics Oral Swab <SOS>を使用します。
  • 唾液中アミラーゼ活性の測定はSalimetrics社のSalivary α-Amylase Assay Kitを用います。
  • 唾液中コルチゾール濃度の測定はSalimetrics社のCortisol Salivary Immunoassay Kitを用います。
  • 唾液中オキシトシン濃度の測定はEnzo社のOxytocin ELISA kitを用います。
    心理的指標として、ストレス状態の測定には「Public Health Research Foundationストレスチェックリスト(PHRF-SCL)、ASDの傾向の測定には「AQ日本語版(AQ-J)成人用」、ADHD傾向について評価することを目的として「CAARS日本語版」を使用します。また、気分の測定のためにTDMS-STを内受容感覚の測定のためにMAIA-Jを用います。

 2023年度の調査結果と併せて、統計解析を行い、学会発表および論文での公表を行う準備を進めます。

期待される研究成果および地域・社会への発信

 本研究の成果は、学会発表および論文にて公表します。
 対象者を青年期だけではなく、子ども、成人、高齢者さらに臨床群などに広げていくこと、タッチケアについては、専門家によるケア→ピア・ケア→セルフケアという方向性で検討を重ねていくこと、日常的に実施可能なケアについては、運動、遊び、笑いなどに拡大して検討を加えていくことにより、幅広い対象に有効な身近なケアを提案できる可能性があると考えられます。このような成果はたとえば「Tachi・けあ」などと本学独自の名称を付してリーフレットなどを用いて広めていくことを考えています。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

活動状況

活動日: 2023年4月14日~2023年4月15日

活動内容:
本格的な調査に先立ち、Figure1のような順序でプレテストを実施しました。 Figure1 プレテストの流れ(内堀ゼミの学生作成の図を改変して使用) プレテストには6名の大学生が参加し、タッチケア前後の唾液オキシトシン濃度を比較したところ、6名中4名にタッチケア直後の唾液オキシトシン濃度の増加を認めました。この結果からタッチケアによってオキシトシンの分泌が促進される可能性が示唆されました。一方、タッチケア実施者との関係や、タッチケアを不快と感じる人がある可能性など、心理的な要因との関連性を検討する必要があると考えられました。唾液コルチゾール濃度については、日内変動の影響があった可能性が考えられ、タッチケアによる明らかな濃度変化は認められませんでした。
プレテストの結果を基に、「身近にできるストレスケアとしての『タッチケア』の効果についての生理学的・心理学的効果の検討」という研究題目で京都橘大学研究倫理審査委員会において倫理審査を受け、承認されたので、10月から本格的な調査を開始いたします。

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名大久保 千惠 所属京都橘大学総合心理学部総合心理学科 職位教授
氏名内堀 恵美 所属京都橘大学健康科学部臨床検査学科 職位専任講師
氏名小西 奈美 所属京都橘大学看護学部看護学科 職位専任講師

海外と日本文化

研究代表者:鈴木 あるの(京都橘大学工学部建築デザイン学科・教授)

研究課題名

海外における日本文化の受容とその変遷

重点研究分野

②持続可能な共生社会~京都再生を中心として~

研究概要

 京都は、伝統文化から先端技術まで多様な産業を擁し、「日本らしさ」を代表する街として海外からの注目度も高いです。しかしそれらの文化や産業にも栄枯盛衰があり、海外からの評価や需要も時代とともに浮沈してきました。本研究においては、住・食・芸術という複数の方面から、日本文化の海外発信およびその受容を記述した文献資料を調査し、その動向や変化をまとめ、日本文化の評価を上下させる要因を探ります。そして、外の目から見た京都や日本の姿を捉え、海外に向けて適切に発信する方法論を考察します。さらに多様な分野を包括する文化比較の議論へと発展させたい。

研究目的・意義

研究の目的

  • 海外から見た京都や日本の姿を、文献調査や聞き取り調査を通じて客観的に捉えます。
  • 日本文化を海外に向けて正確かつ効果的に発信する方法論を考察します。

研究の意義

  • 本研究を通じて、メンバーの専門分野を超えた多様な研究者と意見交換を行い、学際的な文化比較の議論へと発展させることができます。
  • 京都を中心とする日本の芸術および産業の海外展開に資する有益な情報を提供できます。

研究背景(重点研究分野選択理由)

研究の背景

 和室と畳の海外需要について代表者が行ってきた研究の過程において、美術、工芸、音楽、食、文学、教育、宗教、ビジネス、サブカルチャーといった建築以外の分野においても、海外からの評価が社会背景と共に上下しているのではないかという仮説に至りました。

重点研究分野の選択理由

 京都は、伝統文化から先端技術まで多様な産業を擁し、「日本らしさ」を代表する街として海外からの注目度も高いです。しかしそれらの文化や産業にも栄枯盛衰があり、海外からの評価や需要も時代とともに浮沈してきました。その動向を適確に把握することにより、今後の京都の諸産業の発展に資することが期待できます。

研究計画・方法

2023年度

  • 特に明治維新前後19世紀末から20世紀初頭にかけてのジャポニズム伝搬の時代について、建築・工芸、音楽、食の海外への宣伝普及活動およびその受容について、各メンバーが当時の文献資料をあたって概要を調べ、各自で研究報告を執筆することを目標とします。
  • 衣食住のうちの衣分野について、学外の研究者(代表者がかつて英国日本文化学会において共同発表したヨーロッパ出身の若手研究者に打診中)を京都に招聘し意見交換を行います。他の諸分野についても本テーマに近い関心をもつ研究者を探し、意見交換を行います。

2024年度

  • 明治維新前後とくらべて日本文化受容が異なると思われる時代について、建築・工芸、音楽、食の各分野において各メンバーが文献資料をあたって確認し、前年度の結果(明治維新前後)と比較し、その変容についての論文にまとめ学術誌に発表します。
  • メンバーの専門外の他分野(美術・文学・宗教・ビジネス・サブカルチャー等)において「日本」の海外受容を研究している学内外の研究者を招き、本学において公開研究会を開催します。

期待される研究成果および地域・社会への発信

 日本文化の海外における受容について、京都における今後の文化活動や産業に資する情報提供を行うことを目標とします。
 また研究成果の発表や研究会開催を通じて、国際共同研究に繋げることを目標とします。具体的には、EAJS(欧州日本文化学会)またはBAJS(英国日本文化学会)における共同発表、さらにJapan Review等の国際学術誌への英文論文の投稿を目指します。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

活動状況

活動日

2024年3月20日

活動内容

JR京都駅前のキャンパスプラザ京都にて、国際公開シンポジウム「海外と日本文化:変わりゆく伝統・海を越える文化」シンポジウムを開催し、悪天候とJR運休にも拘らず、研究者や伝統産業関係者を中心に42名の方にご参加いただきました。
午前中は特別上映会として「プッチーニに挑む〜岡村喬生のオペラ人生〜」という日本文化の発信と誤謬修正に関するドキュメンタリー映画を鑑賞し、午後からは3名のパネリストに衣食住の三分野から各30〜40分ずつ話題提供をいただきました。
文化庁研究官で日野まちなみ保全会事務局長のオースティン・モーア氏は、日本古来の建築材料や伝統的な建築技法がいかに失われているか、それに対して何ができるかというご経験を話されました。文化学園大学大学院助教のサスキア・トゥーレン博士は、「伝統」は実は時代の必要に応じてその都度作られてきたものであり、着物も洋服と同じファッションとして自由に着て差し支えないのだということを、文化史研究の成果をもとに論理的に主張されました。東華菜館店長の于修忠氏は、基本さえ守っていればローカライズの応用が効くという料理におけるご経験、そして伝統は一度失われたら取り戻すことができないということを、中国の事例を参照しながら指摘されました。
その後、ゲストを加えてのパネルディスカッションでは会場からも活発なご発言をいただき、大変有意義な情報・意見交換をさせていただきました。
当日の様子は、京都新聞3月21日朝刊市民版にも報道されています。

ファブスペース活用

研究代表者:杉浦 昌(京都橘大学工学部情報工学科・教授)

研究課題名

ファブスペース活用の研究

重点研究分野

①医療と情報技術・データサイエンス

研究概要

 本学のクリエーションラボには3Dプリンタやレーザーカッター、超音波カッター、VR/AR(仮想現実/拡張現実)ヘッドセット、教育用ドローンなどが設置され、教育に活用されています。本研究ユニットはこれをさらに発展させ、全学で横断的に活用可能なファブスペースを実現するとともに、本研究ユニットのメンバー教員の専門分野を中心とする幅広い分野での研究を促進する場を実現します。特に、①幅広い領域での活用、②学内におけるイノベーション教育・STEAM教育(科学、技術、工学、アート、数学を総合した総合教育)、③児童、生徒を対象とするものづくり教育の実践と研究を行います。学外の教育機関や企業・団体との連携、地域との連携を推進し、学外活動への参加も目指します。

研究目的・意義

 政府は、第5期科学技術基本計画の中で、ICTの進化等により社会・経済の構造が日々大きく変化する「大変革時代」が到来し、国内外の課題が増大・複雑化する中で、科学技術イノベーション推進の必要性が増しているとしています。そして、日本がめざすべき未来社会のコンセプト「ソサエティー5.0(Society 5.0)」を提唱しています。ソサエティー5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムによって経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会の姿です。このような状況に鑑み、本研究ユニットは、イノベーション教育・STEAM教育の実践と研究を推進し、ファブスペースの活用を研究します。

研究背景(重点研究分野選択理由)

 ソサエティー5.0は、ITを中心とする新たなテクノロジーをさまざまな分野に適用することによって生み出されるイノベーションによって達成されます。このため、従来の縦割りの学問や理論を中心とした学問だけでは不十分で、異分野の学問が交流し、実際の臨床の場で新たな知見を得る、クロスオーバー的かつ実践的なアプローチが必要となります。これはまさに、本学の教学理念である自立・共生・臨床の知と合致するものであるため、重点研究分野として選びました。

研究計画・方法

 ①幅広い領域での活用、②学内におけるイノベーション教育・STEAM教育、③児童、生徒を対象とするものづくり教育の実践と研究を行います。
 具体的には、研究推進メンバーの専門領域を中心としつつ学部・学科をまたがるクロスオーバー型の教育と研究を行います。また、本学学生も、関連する講義を受けたり学内で開催されるコンテストに参加したり、学外の教育機関や企業・団体、地域との連携活動や学外イベントなどに積極的に参加したりして、イノベーション教育・STEAM教育や問題解決型教育の効果を得ます。そしてその成果をもとに、児童や生徒に対するイノベーションやSTEAMの体験学習会やセミナーなどを行って地域や社会に貢献します。

期待される研究成果および地域・社会への発信

 得られた研究成果は学会発表などを通して社会に貢献します。また、活動によって得られた知見や学生が制作した作品、体験などは、オープンキャンパスなどの場で発表し公開します。さらに、それらを活用して学外の児童や生徒を対象とする体験学習会やセミナーなどを開催します。将来は、ものづくりやテクノロジー、イノベーションに関する展示会に参加し成果を発表して社会に貢献します。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

活動状況

活動日

2023年7月31日~2023年8月6日

活動内容

3Dプリンタによる造形を通して「ものづくり」とイノベーションの真髄やそれらとITとのかかわりを体験し理解する実践講座を、学部・学科横断で開催し、経済、経営、情報、建築の学生二十数名が参加しました。
初日の講義で3Dプリンタの仕組みや特性、造形物を設計するための簡易3D-CADソフト(コンピュータで3Dの造形物を設計するソフト)の基本的な使い方を学んだ後、参加者それぞれが作りたいものを決めて造形しました。
一週間の期間中、設計し、造形し、問題点を検討し、その対応策を考え、ふたたび新たに設計するという作業を繰り返し行い、創意と工夫に満ちた造形物を作成しました。
また、期間中、三回にわたって学生諸君にアンケート調査を行い、教育効果の基礎データを得るなどしました。
本講座は好評であったため、学内のさらなる展開や、大学外の機関との連携も視野にいれ、継続していきたいと考えています。

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名杉浦 昌 所属京都橘大学工学部情報工学科 職位教授
氏名鈴木 あるの 所属京都橘大学工学部建築デザイン学科 職位教授
氏名甲斐 義浩 所属京都橘大学健康科学部理学療法学科 職位准教授
氏名西野 毅朗 所属京都橘大学経営学部経営学科 職位専任講師
氏名楊 文賀 所属京都橘大学経営学部経営学科 職位専任講師