入学おめでとう。未来を創る学びへようこそ。 -第59回京都橘大学入学式・第32回京都橘大学大学院入学式 学長式辞-

新入生の皆さん、新入大学院生の皆さん、本日は、京都橘大学へのご入学、誠におめでとうございます。これまで皆さんを支えてこられました、ご家族並びに関係者の皆さまにも、心からお祝いを申し上げます。

 本日、私たちは1764名の新入生、70名の大学院生を新たに迎えました。そのなかには51名の留学生の皆さんもいます。遠く、世界各国からこの京都の地に来ていただいた皆さんを、心から歓迎いたします。なお、先日、大地震のあったミャンマーからも20名の皆さんが入学しています。この場をお借りして、心からお見舞いを申し上げます。

 さて、学部新入生の皆さんの多くは、大学という新しい学びの場に足を踏み入れ、期待と不安が入り混じった心境にあると思います。高等学校までの入学時とも違う不安があると思います。それは、大学が、多くの皆さんにとって最後の学校教育の場であり、仕事や資格、友人関係を含め、自分の人生を決めていく重要な機会になるからだと思います。

 長い人生において、大学時代は、わずか4年間ですが、多くの知識を得たり、体験をすることができ、人間として最も成長できる、かけがえのない時期でもあります。この時間をどう過ごすかによって、その後の人生の方向性が決まるともいえます。

 大学は、研究の場でもあります。私たち教員は、それぞれの専門領域で、常に研究を進めて、新しい知見を得たり、技能やノウハウを磨いて社会の進歩に貢献できるよう努力しています。そしてその成果を、次の時代を担う皆さんに、授業を通して伝える仕事をしています。

 その意味で、大学は、高等学校までとは違い、「未来を創造する場」であるといえます。これは、ひとつには、皆さん方、未来を創造する力を備えた若い世代を社会に送りだすという意味です。もうひとつは、地球や地域社会を持続可能な形で維持したり、健康的で豊かな生活を享受できる科学的知見や新技術の発見・発明を行なう場であるという意味です。

そのためには、まず、あらゆることに関心をもち、疑問を持ってもらいたいと思います。従来の通説や常識と言われるものを批判し、乗り越えることで、真理に近づいていくのが学問や科学の方法です。SNSを通して日々拡散されているフェイク情報に翻弄されないためにも、ウソを見抜く科学的な素養が必要ですし、おかしなことに、いち早く気づく感性を磨くことが大切です。

少数意見を尊重し、国際感覚を養い、学問分野を超えた刺激的な議論をすることが必要です。このことによって、自分の狭い知識や体験から解き放たれ、より普遍的なものの見方を獲得することができるようになります。すなわち、皆さん方には、大学4年の間に、自分の頭で考え、自分の言葉で語り、自分で決断して責任ある行動をする、本学の理念にある「自立」した人間になってもらいたいと思います。また、課題を解決するためには自分だけがよければいいということではなく、国境を超えた共生、地域での共生が何よりも必要です。

 いま、地球、世界、そして日本は、これまでの常識では理解できない大きな変化のなかにあります。ウクライナやガザをはじめとする戦争の拡大、気候変動による地球温暖化と山林火災の多発、地震、火山災害の頻発、さらに新型コロナウイルス感染症等のパンデミック、東アジアにおける人口減少の加速化等、総じて人間社会の存続の危機が、とりわけ日本において深まっているといえます。本学の理念にある「共生」の重要性は、多言を要しません。

 現代世界が抱える問題の多くは、私たちの世代が生み出したものですが、この問題の解決は、次の時代を担う皆さん方に任せるしかありません。将来、どのような仕事につき、どこに住んだとしても、自分の身の回りのことだけではなく、このような問題に向き合う必要があります。その解決方向は、受け身の学びではなく、「なぜ?」あるいは「はて?」という疑問をもち、積極的に学ぶことによってはじめて得られます。

消極的に、時の流れに身を投じても、得られるものは多くありません。学びを通して、未来を見通す力を獲得することで、変化の本質を捉えるだけではなく、自らの変化を楽しみながら、今後の人生を切り開くことができるといえます。そのような「人生の羅針盤」を、ぜひ大学生活、大学院生活を通してつくりあげてください。

 本学は、1967年に橘女子大学として発足し、2005年には男女共学化して京都橘大学となりました。現在、「自立・共生・臨床の知」を教学理念に掲げ、9学部15学科を擁する総合大学として、人文社会系、医療系、工学系の教育・研究・社会連携に取り組んでいます。

加えて、総合大学としての強みを生かして、各学問領域の高度の「専門性」とともに、それらを横断する「総合知」の涵養に力を入れています。ぜひ、皆さん方には、得意な課外活動を含め、学部学科を超えた「総合知」の吸収と豊かな友だちづくりに、思い切って取り組んでもらいたいと思います。

 本学では、一人ひとりの学生が、そのような取り組みができるよう、社会に巣立つその日まで、教職員が一丸となって全力で応援、サポートする体制を整えています。ぜひ、思う存分、大学時代にしかできないことに挑戦し、千年の都である京都の地で大学生活を楽しく元気に過ごしてください。これからの皆さんの歩みが、輝かしい未来へと、のびやかにつながることを念じています。

 本日は、誠に、おめでとうございます。

2025年4月2
京都橘大学
学長 岡田知弘

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