文学部歴史学科の後藤敦史准教授が京都新聞「現代のことば」にコラムを執筆

 文学部歴史学科の後藤敦史准教授が京都新聞「現代のことば」に「進取のために滅んだ徳川幕府?」と題するコラムを執筆した。2018年は明治の新時代を迎えてから150年となる。その明治維新を語る上で、欠かすことのできない黒船来航が1853年にあり、そのわずか15年後に徳川幕府が崩壊した。なぜ徳川幕府は崩壊したのか。これまで多くの歴史研究者が追求してきたが、旧幕臣の福地源一郎が『幕府衰亡論』(1892年)で語った点からは、いろいろと教えられることが多いという。黒船来航の当時、老中だった阿部正弘は、アメリカ大統領からの親書を大名や幕臣たちに公開し、広く意見を求め、朝廷にも報告した。このことが幕府の政治のあり方を大きく転換させる契機になり、幕府は衰亡に向かった。つまり幕府は「保守のために」に滅びたのではなく、広く意見を求めたため「進取のために亡びたる」という逆説を福地は強調した。現在の日本の状況をみると、さまざまな情報の公開や公文書に関わる危機的な状況に直面している。民主主義という点で幕末日本よりはるかに「進取」であるべきはずの日本で、なぜ次々と問題が生じているのか。165年前の黒船来航当時の政権から学ぶべき点も少なくないだろうと結んでいる。

【2018年7月5日 京都新聞に掲載】

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