寺田雅之教授が「令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞」ならびに「第69回前島密賞」をダブル受賞

 文部科学省では、毎年、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を、「科学技術分野の文部科学大臣表彰」として顕彰しており、工学部情報工学科の寺田雅之教授が令和6年度の「科学技術賞」受賞者に選ばれました。表彰式は2024417日(水)に執り行われました。

 また、寺田雅之教授は情報通信及び放送の進歩発展に著しい功績のあった人物に贈呈される公益財団法人通信文化協会主催の「前島密賞」を併せて受賞されました。贈呈式は2024411日(木)に執り行われました。

     

 寺田雅之教授が統轄する研究開発グループは約8,700万台の携帯電話から、日本全国の人口の変動をほぼリアルタイムに推計する「リアルタイムモバイル空間統計」を実現し、20201月から商用サービスとして提供を開始しました。

 また、その実現にあたり、大規模な地理空間データへの実用的な差分プライバシーの適用技術を確立し、統計の信頼性と数理的なプライバシー安全性をリアルタイムに両立させることを可能としました。

 さらには、AI技術との組み合わせによる社会課題解決策として、世界で初めて実⽤的な精度で数時間先の渋滞予測を可能とする「AI渋滞予知」技術を確立しました。予測結果は、NEXCO東⽇本の交通情報Webサイト「ドラぷら」を通じて提供され、今後の渋滞による経済損失やCO2削減効果が期待されています。

 

<関連情報>

文部科学省の報道発表ページ
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01364.html

公益財団法人通信文化協会のホームページ
https://www.tsushinbunka.org/gaiyou.html

モバイル空間統計 人口マップ
https://mobakumap.jp

 

【寺田教授の受賞コメント】

 このたびは、「科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞」と「前島密賞」という、いずれも大変光栄な賞をいただくことができ、とても嬉しく思います。

 それぞれの受賞の対象となった研究である「数理的プライバシー保護に基づくリアルタイム人口統計の開発」は、日本全国における人口分布の推移を携帯電話ネットワークの運用データに基づいてリアルタイムに推計し、プライバシーを保護しながら安全に提供する技術に関するもので、NTTドコモの「モバイル空間統計」として実用化されています。

 これからの「データとAIの時代」においては、さまざまなデータを有効に活用した社会課題の解決や最適化が進むことが期待されますが、特に人々の行動に関するデータの取り扱いにあたってはプライバシーの保護が大きな課題となってきます。本研究では、これらの両立に向けて、未知のプライバシー攻撃に対しても数理的な安全性を保証する「差分プライバシー」と呼ばれるプライバシー保護の枠組みを大規模な地理空間データに適用可能とする技術を実現しました。 

 本研究を通じて得られた成果であるモバイル空間統計は、新型コロナウイルスの感染拡大対策における国や自治体などによる政策決定を支援するとともに、新聞や TV などの報道機関を通じた、いわゆる「三密」の回避に向けた情報提供などにも活用されました。現在も、災害対応や地域活性化などにおける現状把握や課題解決に広く使われています。

 また、さらにこれを AI 技術と組み合わせることにより、数時間先の高速道路の渋滞を予測する「AI 渋滞予知」技術を開発しました。AI 渋滞予知は、モバイル空間統計による「いまどこにどのくらい人が集まっているか」というデータに基づいて、従来より高い精度で「帰りの時間帯にはどの道路がいつごろどのくらい渋滞するか」を予測する技術です。その予測結果は NEXCO 東日本の道路状況提供サイト「ドラぷら」を通じて提供され、渋滞の回避や交通分散に活用いただいています。

 両賞の受賞を励みとし、今後もこれらの研究成果から得られた知見をさらに発展させ、「安全なプライバシー保護に基づく健全なデータ活用社会」の実現と高度化に向けた取り組みを進めていきたく思います。
 

令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞

 第69回前島密賞

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