【経済学部】地方行財政論(首長・議長リレー講座)を実施しました

 経済学部経済学科では、竹内直人教授が担当する3回生の後期授業「地方行財政論」で、京都府と福井県の首長と議長(経験者)5名をお招きし、リレー講座を実施しました。
 日本の地方自治体は首長と議会による二元代表制を採用しています。この講義では、地方自治に関する基本を理解するとともに、多くの国家的政策の実施と多様な地域課題を解決し、地方自治を発展させてきた首長と議会の長である議長から、地方自治の課題とその解決の取り組みを学びました。

【講師】
①京都府宇治市 松村淳子市長  「一人ひとりが輝き伝統と新たな息吹を紡ぐまち・宇治」
②福井県坂井市 池田禎孝市長  「坂井市の現状及び今後について」
③福井県おおい町 中塚 寛町長  「国の衰退を加速する⼈⼝減少と⽇本の社会構造」
④前福井県議会議長 西本正俊氏 「首長と議会の関係」
⑤元京都府議会議長 菅谷寛志氏 「住民と議員活動」

【講義概要】
①松村淳子(まつむらあつこ)京都府宇治市長
 2020年(令和2年)宇治市長就任。現在2期目。

 宇治市では人口減少や少子高齢化の進行、若年層の転出超過に伴う社会情勢から若年層をターゲットにした分析を行っており、多様な働く場の創出や子育てにやさしいまち実現プロジェクトなどを中心に多数のプロジェクトを展開しています。
 また過去に経験した自然災害から教訓を生かし、公園や施設などの再整備、天ヶ瀬ダムの再開発事業などを進めており、安全・安心に住み続けられるまちづくりを目指しています。
①WITHコロナ・POSTコロナ時代の安全・安心
②みんなでつくる子育て・子育ちにやさしい地域共生社会
③活力あふれる産業振興と未来への投資
 これら3つの重点施策を通じて、宇治市がめざす「一人ひとりが輝き、伝統と新たな息吹を紡ぐまち・宇治」の実現にむけ、今後のまちづくりの取り組みについて語っていただきました。

②池田禎孝(いけだよしたか)福井県坂井市長
 2022年(令和4年)に坂井市長就任。現在1期目。

 「チームさかい」の7つの政策(①結婚子育ての希望が叶う社会の実現、②住みよい坂井市・活気あふれる坂井市を創る、③福祉医療政策の充実、④市民の安全安心な暮らしを守る、⑤稼げる産業の創出、⑥坂井市ならではの教育振興、⑦市民主役の市政運営・より健全な財政運営)の項目ごとに関連施策を紹介していただきました。
 特に、空き家対策室を課内に有する移住定住推進課を設置し、空き家対策を絡めた人口減少対策に関する取り組みや、福井県内で「100年に1度のチャンス」を合言葉に、全県あげて様々な観光誘致施策を展開している北陸新幹線に関する取り組みなど、坂井市政の現状について詳しくお話していただきました。

 

③中塚寛(なかつかひろし)福井県おおい町長
 2014年(平成26年)4月おおい町長就任。現在3期目。

 地方から都市への若者の人口流出、それに伴う生活必需サービス(銀行・スーパー・病院・老人ホームなど)の存続への影響や過疎地域での生活上の課題など地方の抱える人口減少についてお話いただきました。また地方の医療環境・医療格差や介護環境、食料・農業・農村基本法の改正やおおい町の子育て支援などの取り組みについてご紹介いただきました。

④ 西本正俊(にしもとまさとし)前福井県議会議長
 2023年(令和5年)5月、第105代福井県議会議長就任。(20245月退任)

 福井県と県議会を取り巻く政治状況を概観し、世論、議会・議員の役割と日々の活動、執行機関(行政機関)との関係等について解説していただきました。これからの地方議会と議員のあり方(活路)について、首長や執行機関とは異なる視点、レベルで取り組む必要があること、どのようにして課題を見つけるか、その解決策をどう提案できるかについて考えました。さらに議会の機能を高めるため、議会会派のあり方や議員の多様性などについて、これまでの議員経験を踏まえてお話しいただきました。

⑤菅谷寛志(すがやひろし)元京都府議会議長
 2021年(令和3年)、第82代京都府議会議長を務め、2023年(令和5年)5月、本学客員教授に就任。

 議会の役割・責務、住民から選ばれた議員が議会活動を通していかに住民自治を担保し、そして住民の意思を代弁し施策化するのか、政治や行政における政党の役割を踏まえ、具体的にお話されました。また、住民の意思を代弁する議員の在り方や議会への女性進出の課題など、地方分権時代における議会・議員の在り方についてお話しいただきました。

 授業では地方行財政の基礎について理解するとともに、講演会を通して、現実の課題に向き合う人々がどのように地方行財政を支えているのかについて学びを深めることができました。また、事例として、「北陸新幹線延伸を巡る問題」を取り上げ、各自治体がこの課題に対してどのように考え、どのように取り組んでいるのかの実際を学ぶ、大変興味深い内容となりました。

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