2025年2月13日(木)、本学キャンパスにて、日比野英子学長(総合心理学部 専門分野:心理学, 臨床心理学)による退職記念講演会「ネガティブ・ケイパビリティ ―私の心理学小史―」を開催しました。
日比野先生は、2012年度の健康科学部開設時に初代学部長として着任され、本学の発展に大きく貢献されました。2019年度からは学長を2期6年にわたり務め、本学の教育・研究の推進に尽力されました。
講義の最初に、ルビンの盃や妻と義母といった多義図形(一つの絵なのに、複数の見え方が存在する図形のこと)と、性格検査の代表的な方法のひとつであるロールシャッハ・テストのような図版を示し、一目見たときに意味が「わかる」ことと、一目見ただけでは「わからない」ことの対比は、心理学において重要なテーマであることを強調しました。
物事が「わかる」と快感を覚え、「わからない」と不快感を抱くのが人間の心理の性質だと述べられ、今回の演題にある「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉は、謎を謎として興味を抱いたまま、「わからない」不快感に耐えぬく力を指すものであると説明されました。さらに、ご自身の心理学研究のあゆみや、日本における心理学のあり方についても解説されました。
京都橘大学に着任時、教学理念の「自立」「共生」「臨床の知」に強く共感されたという日比野先生。健康科学部の設立に際しては、理学療法学科と心理学科をどのように結びつけるか悩まれたそうですが、「重要なのは互いをリスペクトする姿勢」であるという考えに基づいて開設準備を進められた結果、異なる分野の教職員同士が認め合い、協力し合う組織文化が築かれたことを嬉しく思っていると話されました。
講演を終えた後は、看護学部の先生から花束が贈呈され、盛大な拍手に包まれながら、最終講義は締めくくられました。