2025年6月15日(日)、大阪中之島美術館で開催していた『大カプコン展―世界を魅了するゲームクリエイション』(読売新聞社、同美術館主催)※と連携し、新学部・新学科開設記念講演会「文化交響Vol.3/君の"好き"は、世界を変える"チカラ"になる!ゲームが創る未来の文化とは?」を開催しました。会場となったコングレスクエア大阪中之島と大阪中之島美術館には、中高生を中心に約200名が来場し、ゲームクリエイションの最前線に触れました。
※大阪会場会期:2025年3月20日(木・祝)~6月22日(日)
「テクノロジーの進歩」と「文化や異分野」が交響して、新たな社会が創造される──その可能性を象徴する存在として、今回のテーマに据えられたのが「ゲーム」。
本講演会では、人気ゲームの制作舞台裏に迫りながら、ゲームに必要な知識やスキル、そしてAIやデジタル技術の未来まで、幅広い視点から"創る"ことの魅力を学び合う「特別授業」と「大カプコン展シークレットツアー」の二部構成で実施しました。
当日の司会は、元AKB48メンバーでタレントの石田晴香氏が務め、柔らかな語り口で講演を進行してくださいました。講演には、「大カプコン展」の総合プロデュースも担当された株式会社カプコンのプロデューサー・牧野泰之氏、本学工学部長で人工知能(AI)研究の第一人者である松原仁教授、現実とデジタルをつなぐ研究に取り組む、情報工学科の吉田俊介教授が登壇。ゲーム制作やAI技術、デジタル社会の展望について、それぞれの専門的立場から多彩な視点が語られました。
第一部の特別授業では、ゲームやAI、デジタル技術の最前線で活躍する登壇者たちが一堂に会し、4つのステージを通して、"好き"を社会につなげるヒントや、未来を切り拓くテクノロジーの可能性について語り合いました。
【1st STAGE】「創造のステータスをあげよう」
初めのステージでは、ゲーム制作の魅力や創作の出発点について話が展開されました。牧野氏は、チームで行う開発の重要性や「面白さ」が原動力となるゲーム制作の本質について言及。「今のゲームはチームで創っている。クリエイターやディレクター、プロデューサーなど、様々なプロフェッショナルの創造力と個性が集まった総合芸術」と述べ、数十年前のヒット作を事例に当時のドット絵や半透明表現に隠されたクリエイターの創意工夫についても紹介されました。
吉田教授からは「興味さえあればゲームが好きという気持ちが学びにつながっていく。ゲームで培われた創造力や協働力は、現実社会でも十分に通用する」といった視点が示され、参加者の"好き"と社会とのつながりに光を当てる形となりました。
【2nd STAGE】「AIと冒険する未来」
続くステージでは、ゲームの"面白さ"や"楽しさ"の幅を広げるためのAIの可能性について、AIと創作の関係性に焦点が当てられました。AI研究の第一人者である松原教授が、AIの進化の歴史やゲーム分野での応用を紹介。キャラクターの行動やセリフを自動生成するなど、AIが"共創"のパートナーとなる事例に触れ、「AIは"面白い"を理解できるわけではない。大事なのは、何をやらせるかを人間が考えること」と述べ、創造性における人間の役割を強調しました。これに対し、牧野氏や吉田教授からも、実務や研究の視点を踏まえた応答があり、AIとの向き合い方について多角的な視点が示されました。
【Final STAGE】「社会クエスト:ゲームで世界を変えよう」
最終ステージでは、ゲームで培ったテクノロジーが社会にどう役立つかをテーマに議論が進みました。吉田教授は、本学救急救命学科と共に取り組んでいる、散歩アプリを活用した「AEDマップ」開発を例に挙げ、地域の人たちが健康維持をモチベーションにしながら街中のAED設置場所を見える化することで救命率の向上に貢献できると説明。「デジタルツイン」や「メタバース」といった技術も取り上げながら、「これからのデジタル人材には、社会と技術を結びつける力が求められる」と語りました。ステージ終盤には、ゲームやAIの社会的可能性について登壇者同士が意見を交わし、未来への視野を広げる時間となりました。
【FAQ TIME】「質問という名のSSRを使おう」
3つのステージをクリアした後は、参加者との質疑応答の時間「FAQ TIME」を実施。「ゲーム制作に必要なスキルは?」「AIに感情は芽生えるのか?」「将来ゲーム業界で働くにはどうすればいいか?」といった具体的な質問が寄せられ、登壇者たちそれぞれが経験や思いを交えながら回答しました。会場には、参加者の前向きな熱意と"好き"を学びに変えるきっかけが満ちていました。
第二部では、閉館後の大阪中之島美術館を貸切で巡る「シークレットツアー」を実施しました。ツアー内では、牧野氏自らが解説を行うギャラリートークを実施。ドット絵による色表現やキャラクターの3Dモデル開発についてなど、普段は知ることのできない制作の舞台裏が紹介されました。参加者たちは、展示を見学しながら牧野氏の解説に熱心に耳を傾け、時折メモを取ったり、展示物に熱心に見入ったりする姿が見られました。
参加者からは、「普段聞けないようなゲーム開発の話が聞けて良かった。特に質問の回答がどれも印象的だった」「AIがどのように活用されているのか知り、AI×ゲームの可能性についてもっと詳しく学びたくなった」「自分はサッカーが好きなので、サッカーロボの話がすごく面白かった」など、登壇者の言葉やテーマに強く刺激を受けた声が多く寄せられました。特別授業を通して、楽しさとともに新たな視点や学びを得た様子がうかがえました。
デジタルメディアやAIロボティクスの分野は、日本の産業だけでなく、文化をも形づくる重要な領域です。本学では、テクノロジーを通じて社会とつながる喜びや、"創る"ことの楽しさを実感できる機会を引き続き提供し、次世代を担う人材の育成に推進してまいります。
【関連サイト】
■新学部・新学科特設サイト
https://www.tachibana-u.ac.jp/admission/2026special/
■大カプコン展-世界を魅了するゲームクリエイション(外部サイト)
https://daicapcomten.jp/
【イベントチラシ】