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海外と日本文化

研究代表者:鈴木 あるの(京都橘大学工学部建築デザイン学科・教授)

研究課題名

海外における日本文化の受容とその変遷

重点研究分野

②持続可能な共生社会~京都再生を中心として~

活動状況

活動日

2024年3月20日

活動内容

JR京都駅前のキャンパスプラザ京都にて、国際公開シンポジウム「海外と日本文化:変わりゆく伝統・海を越える文化」シンポジウムを開催し、悪天候とJR運休にも拘らず、研究者や伝統産業関係者を中心に42名の方にご参加いただきました。
午前中は特別上映会として「プッチーニに挑む〜岡村喬生のオペラ人生〜」という日本文化の発信と誤謬修正に関するドキュメンタリー映画を鑑賞し、午後からは3名のパネリストに衣食住の三分野から各30〜40分ずつ話題提供をいただきました。
文化庁研究官で日野まちなみ保全会事務局長のオースティン・モーア氏は、日本古来の建築材料や伝統的な建築技法がいかに失われているか、それに対して何ができるかというご経験を話されました。文化学園大学大学院助教のサスキア・トゥーレン博士は、「伝統」は実は時代の必要に応じてその都度作られてきたものであり、着物も洋服と同じファッションとして自由に着て差し支えないのだということを、文化史研究の成果をもとに論理的に主張されました。東華菜館店長の于修忠氏は、基本さえ守っていればローカライズの応用が効くという料理におけるご経験、そして伝統は一度失われたら取り戻すことができないということを、中国の事例を参照しながら指摘されました。
その後、ゲストを加えてのパネルディスカッションでは会場からも活発なご発言をいただき、大変有意義な情報・意見交換をさせていただきました。
当日の様子は、京都新聞3月21日朝刊市民版にも報道されています。

活動日

2023年度(まとめ)

活動内容

2023年度は、ユニットのメンバーがそれぞれの分野において、明治維新前後の日本文化受容について記されている文献の読み込みを行い、それぞれの分野において学会発表や関連する報告の執筆を行いました。また今後の研究の幅を広げ、特に現在メンバーに含まれていない衣の分野についての知見を得ることを目的として、2024年3月20日(祝日、国際幸福デー)、JR京都駅前のキャンパスプラザ京都において、衣食住という生活全般について、学外の外国人研究者および実業家を招いて公開国際シンポジウムを開催しました。長年日本の国際化事業に携わってきた傍で本格的な日本建築に住み続けている文化庁研究官オースティン・モーア氏からは、「在住外国人が見る日本の伝統文化存続の危機」、文化学園大学大学院助教で着物研究家のサスキヤ・トゥーレン氏からは「外国人着物研究家が見たファッションとしての着物:伝統民族衣装のイメージからの打破へ」、京都四条大橋のたもとと洛北に伝統的北京料理の店を構える東華菜館店長 于修忠氏からは「伝統たる所以とは?京都における伝統中華料理を切り口に」というそれぞれのテーマでご講演をいただき、さらに大阪で沖縄料理と島唄の店「美ら島物語」を経営するイオランダ・ロブ氏にも加わっていただき、パネルディスカッションを行いました。当日は京都のみならず全国の大学に所属する日本文化研究者をはじめ、一般社団法人文化財畳技術保存会会長磯垣昇会長など多くの伝統産業関係者にも来場いただき、会場も交えた活発なディスカッションを行うことができました。シンポジウムに先立って上映した映画「プッチーニに挑む」に対しても、「日本文化の発信ということについて非常に考えさせられる内容でした。これについてもさらに意見交換をしてみたい」と好評をいただきました。またシンポジウム翌日の京都新聞朝刊に「日本文化発信 知恵探る」というタイトルで当日のディスカッションの様子を記事にしていただきました。

活動日

2024年7月31日

活動内容

 札幌で開催されたICCEPM2024という建築生産分野の国際学会において、鈴木あるのがThe Future of Tatami Outside Japan(海外における畳の未来)と題した研究発表を行いました。海外からの参加者のみならず日本人研究者からも「畳について知らないことがたくさんあった」という感想をいただき、有意義な意見交換をすることができました。本来の畳は藺草や稲藁といった自然素材でできており、その生産も農家が担ってきましたが、近年では畳関係の生産農家が急減し、工業製品の畳に置き換わっています。しかしこの調査により、ヨーロッパにおいて自然素材でつくられた伝統的な畳の需要があるということがわかりました。この研究発表の内容をまとめた英文の論文はICCEPMのウェブサイトにおいて一般公開されています。https://www.iccepm.org/conferences (ICCEPM2024 Proceedings, 1256-1263pp.)

研究概要

 京都は、伝統文化から先端技術まで多様な産業を擁し、「日本らしさ」を代表する街として海外からの注目度も高いです。しかしそれらの文化や産業にも栄枯盛衰があり、海外からの評価や需要も時代とともに浮沈してきました。本研究においては、住・食・芸術という複数の方面から、日本文化の海外発信およびその受容を記述した文献資料を調査し、その動向や変化をまとめ、日本文化の評価を上下させる要因を探ります。そして、外の目から見た京都や日本の姿を捉え、海外に向けて適切に発信する方法論を考察します。さらに多様な分野を包括する文化比較の議論へと発展させたい。

研究目的・意義

研究の目的

  • 海外から見た京都や日本の姿を、文献調査や聞き取り調査を通じて客観的に捉えます。
  • 日本文化を海外に向けて正確かつ効果的に発信する方法論を考察します。

研究の意義

  • 本研究を通じて、メンバーの専門分野を超えた多様な研究者と意見交換を行い、学際的な文化比較の議論へと発展させることができます。
  • 京都を中心とする日本の芸術および産業の海外展開に資する有益な情報を提供できます。

研究背景(重点研究分野選択理由)

研究の背景

 和室と畳の海外需要について代表者が行ってきた研究の過程において、美術、工芸、音楽、食、文学、教育、宗教、ビジネス、サブカルチャーといった建築以外の分野においても、海外からの評価が社会背景と共に上下しているのではないかという仮説に至りました。

重点研究分野の選択理由

 京都は、伝統文化から先端技術まで多様な産業を擁し、「日本らしさ」を代表する街として海外からの注目度も高いです。しかしそれらの文化や産業にも栄枯盛衰があり、海外からの評価や需要も時代とともに浮沈してきました。その動向を適確に把握することにより、今後の京都の諸産業の発展に資することが期待できます。

研究計画・方法

2023年度

  • 特に明治維新前後19世紀末から20世紀初頭にかけてのジャポニズム伝搬の時代について、建築・工芸、音楽、食の海外への宣伝普及活動およびその受容について、各メンバーが当時の文献資料をあたって概要を調べ、各自で研究報告を執筆することを目標とします。
  • 衣食住のうちの衣分野について、学外の研究者(代表者がかつて英国日本文化学会において共同発表したヨーロッパ出身の若手研究者に打診中)を京都に招聘し意見交換を行います。他の諸分野についても本テーマに近い関心をもつ研究者を探し、意見交換を行います。

2024年度

  • 明治維新前後とくらべて日本文化受容が異なると思われる時代について、建築・工芸、音楽、食の各分野において各メンバーが文献資料をあたって確認し、前年度の結果(明治維新前後)と比較し、その変容についての論文にまとめ学術誌に発表します。
  • メンバーの専門外の他分野(美術・文学・宗教・ビジネス・サブカルチャー等)において「日本」の海外受容を研究している学内外の研究者を招き、本学において公開研究会を開催します。

期待される研究成果および地域・社会への発信

 日本文化の海外における受容について、京都における今後の文化活動や産業に資する情報提供を行うことを目標とします。
 また研究成果の発表や研究会開催を通じて、国際共同研究に繋げることを目標とします。具体的には、EAJS(欧州日本文化学会)またはBAJS(英国日本文化学会)における共同発表、さらにJapan Review等の国際学術誌への英文論文の投稿を目指します。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名鈴木 あるの 所属京都橘大学工学部建築デザイン学科 職位教授
氏名佐野 仁美 所属京都橘大学発達教育学部 児童教育学科 職位教授