TOP

ジェンダー・ストラクチャー
研究ユニット

研究代表者:村上 裕道(京都橘大学文学部歴史遺産学科・教授)

研究課題名

ジェンダーの構造を考える―本学学生に見る専門職能意識とジェンダーの萌芽―

重点研究分野

④女性の歴史を学び、女性の未来を考える

活動状況

活動日

2023年9月19日

活動内容

本研究では学生の専門職としてのキャリアにおけるジェンダー(格)差の影響に関する研究調査を目的とし、2024年度までの基礎的研究においては、研究体制の確立とともに、看護学部学生へのアンケート調査を通じて調査手法の確立を目指しています。
本年度の活動は、3つを計画しております。1つは、主要なテーマであるアンケート調査の準備及び倫理委員会の許可の取得、2つは、アンケートの実施、そして、3つは、情報工学科の協力を得てのアンケートの分析であります。
本年5月17日に第1回会議を開催。以降、協議を重ね、本日の第8回会議において、第1段階の倫理委員会への申請手続までを作成したところです。
なお、7月25日には、ジェンダー研究者の大澤真理先生(元東京大学社会学研究所長)をお迎えし、「ジェンダー研究の現状と論点」と題して特別研究(講演)会を開催いたしました。また、研究人数も8名に増強してきたところです。

活動日

2023年度(まとめ)

活動内容

【年次計画の概要】
<2023年度・初年度>
・先進事例調査のため、外部研究者へのヒアリング調査および先進的研究者による研究会等の開催。
・研究倫理委員会の承認を受け、個人情報保護やインフォームド・コンセントなどについても配慮を行いつつ、本学学生(看護学部)へウェブによるアンケート調査を行い、データ化を実施しました。

<2024年度>
・先進的研究者等との共同による研究会等の開催を予定しています。
・アンケート調査データのクロス分析(情報工学科学生へ一部委託)及び調査結果を公表します。

【2023年度活動の詳細】
4月よりアンケート調査内容の作成のため、文献調査および研究調査に係る先進事例の調査を実施、外部研究者(大沢真理・元東京大学社会学研究所所長)へのヒアリング調査を行い、7月に『女性歴史文化研究所「ジェンダー・ストラクチャー研究ユニット」特別研究会』を開催。先進的研究者である大沢先生より『ジェンダー研究の現状と論点』と題した研究講演を受け、アンケート調査内容に係る指導及び講評を得ました。
 8月よりアンケート調査内容の修正の実施並びにウェブアンケート調査のプログラム作成を開始、アンケート調査に関する研究倫理委員会への申請に向けての準備を実施しました。
10月に倫理委員会へ申請を行い、10月11日に研究倫理審査結果(承認)通知書を受理、アンケート調査の実施施行を開始しました。
 アンケート調査の実施をformsで行い、なおかつ匿名性を守った調査とするため、新たにプログラムの作成を情報工学科に依頼。本学学生の実地経験の機会の付与も兼ねて情報工学科学生へforms調査プログラムの作成並びにデータ集計の一部を依頼して進めました。
 アンケート調査については、12月末日を締め切りとして実施。その結果、1回生72名、2回生95名、3回生83名、4回生39名、合計289名からの回答を得ました。
 調査結果の集計後、資料編の作成に着手し、グラフ化も済ませクロス分析に入っております。


【所 感】
まず職(ジョブ)が確定され、ジョブにふさわしい人を選ぶ「ジョブ型」構造をとる専門性の強いジョブに対して、人と職をすり合わせる「人=ジョブ」構造(メンバーシップ型と呼ばれている)を基本としている(転職が困難)我が国において、看護師等、専門性の高いジョブ型構造のなかにいる技術者の専門職のキャリア意識がどのように形成されるか。また、女性優位の看護師数を背景としながらも、伝統的な男女の性差が残る我が国において専門職のキャリア意識や働き方にどのように影響しているのか。看護師には、この複合的な構造が影響しており、看護学部学生の調査によりその状況が見えそうな感触を得ております。専門職におけるジェンダーの日本的構造の理解に近づくのではないかと期待しております。

活動日

2024年10月16日

活動内容

第12回 研究ユニット会議を開催しました。

【研究調査の現状】
 2024年3月までに、本学看護学部学生へのアンケートによる意識調査を実施し、289名からの回答を得ました。現在、クロス分析を終えて、調査報告書の資料編を作成しているところです。
 なお、分析において、4回生の回答数が少なかったことから、補足調査が必要となり、現在、4回生に向けたインタビュー補足調査を準備しています。
 また、来年2月中旬には、学内における発表会を計画しており、現在、発表会に向けた準備を行っています。
【研究の課題】
 ジョブ型の看護職から調査を実施してきましたが、その調査分析の過程において、日本型のメンバーシップ的(年功序列、多能職員化)なあり方が専門職(ジョブ型)である看護職にも浸潤している可能性が示唆されたところであり、その仮説を解明する必要を生じたところです。
 そのため、看護学生等、初期段階の者へのアンケート調査に加えて、現職の看護師長等の管理職、また、卒業後10年程度たった看護師へのインタビューを実施することにより、上記論点を明らかにする新たな調査を検討しています。

研究概要

 女性歴史文化研究所における本研究「ジェンダーの構造を考える」は、全学横断的な文理融合的視点から推進する研究です。
 本学において職能に関する教育を受け、一見、男女の性差のない条件の下、職業に就く専門職においても、女性の方が離職・転職等の割合が多いことが知られており、専門職におけるジェンダーに関する構造的課題を究明し、改善策について提言するものです。

研究目的・意義

 ジェンダーは、男女の性差が社会的な差に単純に反映されるだけではなく、男性も含めた社会的構造のゆがみが強調されて女性に集約される傾向があります。大学において職能に関する教育を受け、一見、男女の性差のない条件の下、職業に就く専門職においても、女性の方が離職・転職等の割合が多いことが知られています。本学においても、国家資格を取得し、教師・建築士・看護師等、専門職として業務に従事する職能を選択している者や公務員等に就く者が多数います。
 しかし、彼らが大学において専門職を目指し始めた時点から卒業後の状況までについて、社会的な構造のゆがみがどのように影響を与え、中途離職や転職等の判断にいたっているのか、長期的な視点からの調査は未だ行われていません。 
 本研究では、男女学生が専門職を目指し始めた初期の段階から、専門職として就職し、そして、年齢を重ねてリタイヤするまでの様々な人生の段階において、社会的な構造のゆがみとその影響について研究するものです。さらに、個別専門分野の特徴的な事象を通して、その分野において特徴的なジェンダーの「構造」、またはその「構造」が生み出す社会的な課題であるジェンダー(格)差を具体的に明らかにします。目標として、制度の改善への提言に加え、大学における教育課程において、ジェンダーを生み出す構造の改善につながる知見と感性の涵養を図ります。

研究背景(重点研究分野選択理由)

 本学では、これまで文学部を中心として女性歴史文化研究所を運営し、女性史について研究を重ねてきました。しかし、近年では、本学の規模も大きくなり、総合大学として各種の研究を実践するところとなり、女性史研究所としても文理融合的視点からの研究課題が望まれるところとなってきました。
 そのため、研究員の所属学部を拡大し、これまでの研究アプローチを尊重しつつも大学共通の課題に取り組むこととし、女性歴史文化研究所における全学横断的な長期的研究課題として「ジェンダーの構造を考える」を据えたところです。そして、研究の進展に合わせて、女性歴史文化研究所の主体的研究に位置付けて研究を伸展する予定です。

研究計画・方法

 女性歴史文化研究所における全学横断的な長期的研究課題として「ジェンダーの構造を考える」を据え、研究副題を設定して2か年1クールの計画的な研究に取り組みます。
 今回は、その本格的な研究の開始に向け、2年間の基礎的な研究を行うこととし、基礎的研究の後には、女性歴史文化研究所の主体的研究と位置付けて研究を展開することとしたい。2023年度の基礎的研究の期間においては、「1.研究体制」および「2.調査手法」の確立を目指します。なお、適宜、科学研究費助成事業等の外部資金獲得を目指して、研究を継続する計画です。

期待される研究成果および地域・社会への発信

 研究成果については、女性歴史文化研究所が発刊する研究所紀要や広報誌『クロノス』、あるいは他の学会誌等に掲載の計画をしています。また、研究成果の最終的な活用方策として、教育プログラムに反映し、どのように学生に還元するか、今後検討の予定です。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名村上 裕道 所属京都橘大学文学部歴史遺産学科 職位教授
氏名竹内 直人 所属京都橘大学経済学部経済学科 職位教授
氏名那須ダグバ 潤子 所属京都橘大学看護学部看護学科 職位准教授
氏名中久保 辰夫 所属京都橘大学文学部歴史遺産学科 職位准教授
氏名山内 由賀 所属京都橘大学文学部歴史学科 職位専任講師
氏名加藤 諒 所属京都橘大学工学部情報工学科 職位専任講師
氏名伊藤 弘子 所属京都橘大学看護学部看護学科 職位専任講師
氏名小西 奈美 所属明治国際医療大学 看護学部 職位准教授