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ジェンダー・ストラクチャー
研究ユニット

研究代表者:竹内 直人(京都橘大学 経済学部 経済学科・教授)

研究課題名

ジェンダーの構造を考える
―国際比較による専門職(看護職)におけるジェンダーの構造に関する課題の明確化―

重点研究分野

④女性の歴史を学び、女性の未来を考える

研究期間

2023年4月1日 ~ 2027年3月31日

[ 2025年3月31日までの活動はこちら ]

研究概要

 本研究「ジェンダーの構造を考える」は、本学の重点研究分野「女性の歴史を学び、女性の未来を考える」を進めるための研究ユニットとして2023年度に採択され、引き続き女性歴史文化研究所が全学横断的な視点から推進する研究の一環として実施するものである。
 本学において職能に関する教育を受け、一見、男女の性差のない条件の下、職業に就く専門職においても、女性の方が離職・転職等の割合が多いことが知られており、専門職におけるジェンダーに関する構造的課題について、2023年度から本学看護学部の学生の意識調査から研究を開始したところである。2025年度には、看護師等の専門職の意識調査を通して、国内及び海外の同職との比較により国内における同職のジェンダー構造に係る課題を究明し、改善策の提言へ発展させることを目標とする。
 期間内には、京都市内及びUnivercity of Otago(オタゴ大学、ニュージーランド)他を訪問し、日本とニュージーランド(オーストラリア)の看護制度の違いを明らかにし、2026年度以降の具体的なジェンダーに係る国際間比較研究を準備する。

研究目的・意義

【研究目的】

 本研究では、男女学生が専門職を目指し始めた初期の段階から、専門職として就職し、そして、年齢を重ねてリタイアするまでの様々な人生の段階において、労働・雇用に係る構造のゆがみとその影響について研究するものである。さらに、個別専門分野の特徴的な事象を通して、その分野において特徴的なジェンダーの「構造」、またはその「構造」が生み出す社会的な課題であるジェンダー(格)差を具体的に明らかにする。
 2024年3月までの基礎的研究では、本学学生への大規模なアンケート調査及びインタビュー調査を実施して、入学から就職に至る初期段階の基礎的な研究を行い、京都市内の大・中・小規模の各病院で働く10年目前後の看護師、そして、管理職として働く看護部長等へインタビューを開始しており、2025年度には、看護学部のオタゴ大学(ニュージーランド)との連携の進捗確認の上、同職へのインタビュー等を通して、国内の病院規模等の違いによるジェンダー構造の課題に加えて、国の違いによるジェンダー構造の課題を明らかにする計画である。

【研究の構成】

 看護職に関する基本的な制度とその運用の実態を調べ、それを踏まえて、アンケートとインタビューの成果をもとに考察・分析を行う。
(1)看護職の育成システム(文献調査・海外現地調査)
・大学教育系か専門教育系か両者混在か。これに伴う社会的威信(医師給料等との格差)
・国家試験系か職業団体試験系か混在か。
・学校教育のプログラム(座学時間と現地研修時間の比率など)
・就職後育成プログラム(個人的努力か組織的育成か)
(2)看護職のキャリアシステム(国内、海外におけるインタビュー調査)
・病院における組織編制及び職制・給料表(運用)―職間異動の実態など
・典型的キャリアモデル(昇進モデル)の析出(パターン化)―キャリアの把握
・転職の実態 ―組織間転職の頻度、割合 (3)学生意識とその変化(アンケート結果分析、海外でのインタビュー調査)

【研究意義】

 女性歴史文化研究所は、本学の重点研究分野の一つである「女性の歴史を学び、女性の未来を考える」の推進のため、これからも女性史・ジェンダーの研究拠点として活動を進め、地域や社会に開かれた大学としての使命を果さねばならない。本研究はその使命の一翼を担う研究である。
 2023年度から実施しているジョブ型の看護職から調査を実施したが、その調査分析の過程において、日本型のメンバーシップ的(年功序列、多能職員化)なあり方が専門職(ジョブ型)である看護職にも浸潤している可能性が示唆されたところであり、その論点を明確にするための調査を行う必要を生じたところである。そのため、看護学生等、看護職分野における初期段階の者への既存のアンケート調査に加えて、現職の看護師長等の管理職、また、卒業後10年程度たった看護師へのインタビューを実施することにより、上記論点について、日本における専門職としての看護職の位置づけとジェンダー構造における課題の観点から、本研究プロジェクトの解釈を明らかにする。また、2025年度は海外調査を行い、国の違いによるジェンダー構造の課題を明らかにすることとしているが、これまで、ジェンダー構造を解明する観点からの我が国の看護職について研究した事例はなく、本成果は、我が国における看護職の職能としての位置付けの再考、そして、教育プログラムの新たな開発に寄与するものと確信している。

研究背景(重点研究分野選択理由)

 ジェンダーは、男女の性差が社会的な差に単純に反映されるだけではなく、男性も含めた社会的構造のゆがみが強調されて女性に集約される傾向がある。大学において職能に関する教育を受け、一見、男女の性差のない条件の下、職業に就く専門職においても、女性の方が離職・転職等の割合が多いことが知られている。本学においても、国家資格を取得し、教師・建築士・看護師等、専門職として業務に従事する職能を選択している者や公務員等に就く者が多数いる。しかし、彼らが大学において専門職を目指し始めた時点から卒業後の状況までについて、社会的な構造のゆがみがどのように影響を与え、中途離職や転職等の判断にいたっているのか、長期的・国際的な視点からの調査は未だ行われていない。

研究計画・方法

2024年度から継続実施している研究

・看護部長クラス&それに準ずる役職及び看護師10年前後の経験者へのインタビューによる意識調査の実施
   〇大規模_500床以上       3病院(国・公・私)
   〇中規模_100床以上500床未満 3病院(団・私)
   〇小規模_100床未満       3病院(私)

2025年度研究計画

・2024年度から実施している看護部長等へのインタビュー調査のデータ化及び同分析の継続実施
・2023年度から実施している研究調査成果の公表 6月に京都キャンパスプラザで実施の計画
・ニュージーランドにおける看護部長相当職、及び、10年前後の経験のある看護師へのインタビュー調査の準備及び試行調査

2026年度研究計画

・ニュージーランド看護部長相当職、及び、10年前後の経験のある看護師へのインタビュー調査の実施及び日本との比較による看護職の専門職能の評価とジェンダー格差の実態の分析
・報告書の刊行、及び、出版化への取り組み開始

期待される研究成果および地域・社会への発信

 本学の重点研究分野の一つである「女性の歴史を学び、女性の未来を考える」について、女性歴史文化研究所は、女性史・ジェンダーの研究拠点として活動を進めており、本研究の研究成果についても、研究所の使命に沿って社会に還元する計画である。まず、2025年度は女性歴史文化研究所シンポジウム「ジェンダーの構造を考える」として、2023・2024年度実施した研究の一端を、広く一般に公開する予定である。また、学内の紀要をはじめとした学内誌への掲載並びに研究会の開催、学外の各種学会誌への投稿や学会発表に努めるとともに、研究成果の最終的な活用方策として、これら研究で得た知見を基盤に、教育プログラムを新たに開発し、ジェンダー(格)差の解消に向けた取り組みを展開する計画である。

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名竹内 直人 所属京都橘大学 経済学部 経済学科 職位教授
氏名那須ダグバ 潤子 所属京都橘大学 看護学部 看護学科 職位准教授
氏名山内 由賀 所属京都橘大学 文学部 歴史学科 職位専任講師
氏名加藤 諒 所属京都橘大学 工学部 情報工学科 職位専任講師
氏名伊藤 弘子 所属京都橘大学 看護学部 看護学科 職位専任講師
氏名藤原 麻有 所属京都橘大学 健康科学部 臨床検査学科 職位専任講師
氏名更田 新太郎 所属京都橘大学 看護学部 看護学科 職位助教
氏名内本 充統 所属京都橘大学 発達教育学部 児童教育学科 職位教授
氏名小西 奈美 * 所属明治国際医療大学 職位准教授
氏名鹿島 謙輔 * 所属埼玉大学大学院 職位博士生
氏名中久保 辰夫 * 所属大阪大学大学院 職位准教授

*共同研究者(外部・客員研究員)