研究代表者:堀江 淳(京都橘大学 健康科学部 理学療法学科・教授)
慢性閉塞性肺疾患患者に対する低頻度、包括的介入のこころとからだへの効果検証
③こころとからだ
2023年4月1日 ~ 2027年3月31日
病状安定期慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)患者の日常生活に光をともすという大義の元、研究ユニット名を「HIKARI」とした。
本研究では、COPD患者に対して、「こころとからだ」に如何なる関連があるのかを検証するため、これまで横断データの解析、6か月間の縦断データの解析と公表を行ってきた。今回、これまでの縦断分析を継承し、3年間の縦断研究を実施し客観的に検証する。更に、「外来」「低頻度」「包括的」をキーワードとした介入プログラムを開発し、「こころとからだ」にプラスの効果をもたらすリハビリテーションプログラムを創出する。
病状安定期慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)患者に対して、「こころとからだ」に如何なる関連があるのかを、横断的、かつ縦断的(3年間)に検証すること。更に、その結果をもとに、「外来」「低頻度」「包括的」をキーワードとした介入プログラムを開発し、「こころとからだ」にプラスの効果をもたらすリハビリテーションプログラムを創出すること。
呼吸リハビリテーションは、「からだ」に障害が生じたCOPD患者の息切れや運動耐容能を改善させる、あるいは「こころ」に障害が生じたCOPD患者のうつや不安を改善することは明らかとなっている。しかしながら、その両者の関連については十分明らかになっていない。本研究では、それら「こころ」と「からだ」の関連を客観的に検証することができる。また、3年間の縦断的研究により、その因果関係にまで踏み込んだ分析が可能となる。更に、その結果から、近年、無床診療所での外来呼吸リハビリテーションのニーズの高まりに応答するために、「外来」「低頻度」「包括的」をキーワードとした呼吸リハビリテーションのあり方について社会に発信、啓発することができる。
呼吸リハビリテーションのステートメントにおいて、呼吸リハビリテーションは「シームレスな介入である」と定義されている。しかし、医療機関で「シームレスな介入」が行われている施設は少ない。日本の医療制度上、医療機関、いわゆる病院での呼吸リハビリテーションの継続は困難であり、クリニック、あるいは介護保険領域の施設での継続が必要であると考えられる。加えて、その継続は、長期間にわたることから低頻度である必要がある。近年では、「無床診療所での外来呼吸リハビリテーション」「低頻度」をキーワードとした効果検証も、少しずつではあるが散見されるようになり、第34回日本呼吸ケアリハビリテーション学会学術大会では「外来リハビリ」のセッションが設けられたり、「無床診療所」のいうワードが用いられた演題が散見されたり、その機運は高まりをみせている。本研究では、前述したように「こころとからだ」に焦点をあて、「外来」「低頻度」「包括的」呼吸リハビリテーションプログラムを開発し、その効果を客観的に検証する。前述のように機運の高まりは見せているものの、「外来」「低頻度」「包括的」「こころとからだ」について、より客観的に検証した先行研究はほとんどなされていない実状は残存する。
詳細な研究計画、方法はこれまで2年間実施してきたものに準ずる。
2025年4月から2027年3月(研究計画Ⅱ期1年目)(全体期間2028年3月まで通算5年間)
病状安定期外来COPD患者による「こころとからだ」の関連を検証する横断研究と、その結果ら開発する介入プログラムの効果検証のための前向き縦断研究
NPO法人はがくれ呼吸ケアネット登録クリニック(かとうクリニック、渡辺医院、石井内科、薬師寺医院)の診察室、およびリハビリテーション室
病状安定期外来COPD患者(年齢、性別、重症度、呼吸機能不問)
・除外対象者:COPD以外の呼吸器疾患を有する者、肢帯機能障害により歩行が障害されている者、重篤な内科的合併症を有する者、認知症を有する者、その他、担当医師により研究参加が不適切と判断する者
・目標対象数:120名
・算出根拠:サンプルサイズ120名(効果量0.5、有意水準5%、検定力0.8で算出)、および研究参加施設の外来通院中のCOPD患者数より算出。これまでの横断検証のサンプルの3年間の縦断データの追跡のための対象数。
・一般情報:年齢、身長、体重、BMI、合併症、栄養状態、血液ガス、血液・生化学検査、胸部X線、気管支拡張剤の種類、1年間 の急性憎悪回数、入院回数
・こころ:精神・心理機能;ストレス反応、抑うつ、認知機能、前頭葉機能
・からだ:四肢筋力、体組成、呼吸筋力、運動耐容能、活動量計による身体活動量
・社会背景:職業、喫煙、飲酒、家族構成、住宅環境、車の使用、運動習慣
これまでの2年間では、日本呼吸ケアリハビリテーション学会学術大会にて、研究成果を2演題発表した。1つ目は「慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の軽度認知障害の有無と身体能力・身体活動・自己管理能力・生きがいの差の検証」という演題名で、軽度認知障害のあるCOPD患者は、家庭内での生活活動、歩行、一週間の身体活動量、強い強さの身体活動量が少ないという結果を公表した。2つ目は「慢性閉塞性肺疾患患者に対する低頻度外来呼吸リハビリテーションの効果検証」という演題名で、低頻度(月1回)の介入で、自己管理能力の栄養や禁煙は改善するが、身体機能や生きがいなどの改善には至らなかったことを既に公表している。低頻度、外来呼吸リハビリの限界について問題提起した。
今後の研究成果の公表は、学術大会(日本呼吸ケアリハビリテーション学会、日本呼吸理学療法学会)、論文(Respiratory Care)にて公表予定である。社会への発信方法、啓発活動は、NPO法人はがくれ呼吸ケアネットワークのホームページに掲載することで、医療関係者のみならず、一般の方へも公表する機会を設ける。また、同法人が開催する「みんなで学ぼう呼吸ケア研修会」の中で医療関係者を中心に研究成果を公表する。これら研究成果の公表に際しては、本学ユニット研究の助成を受けたことを明確にし、本学教員がユニットを形成し安定期COPD患者に対する研究を積極的に行っていることをアピールすることができる。
ユニットメンバー
氏名 | 所属 | 職位 |
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氏名:堀江 淳 | 所属:京都橘大学 健康科学部 理学療法学科 | 職位:教授 |
氏名:小山 智史 | 所属:京都橘大学 看護学部 看護学科 | 職位:准教授 |
氏名:田中 芳幸 | 所属:京都橘大学 総合心理部 総合心理学科 | 職位:教授 |
氏名:原田 瞬 | 所属:京都橘大学 健康科学部 作業療法学科 | 職位:専任講師 |
氏名:武田 広道 | 所属:京都橘大学 健康科学部 理学療法学科 | 職位:助教 |
氏名:小谷 将太 * | 所属:神戸国際大学 | 職位:助教 |
氏名:江越 正次朗 * | 所属:広島都市学園大学 | 職位:講師 |
*共同研究者(外部・客員研究員)