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早期PAD実現のための研究ユニット

研究代表者:関根 和弘(京都橘大学健康科学部救急救命学科・教授)

研究課題名

病院外心停止(OHCA)に対する、バイスタンダーによる早期除細動実現に関する研究

重点研究分野

①医療と情報技術・データサイエンス

活動状況

活動日

2023年9月9日

活動内容

一般市民による早期除細動(AED:Automated External Defibrillator) のことをPublic Access Defibrillation(以下、PAD)といい2005年にはPADの実施率が1.1%であったものが2013年には16.5%まで増えています。このPADをすぐに使用できるAEDの配置地図(以下、PADマップ)が山科区内で3種類(日本AED財団、日本全国AEDマップ、京都市HP)存在します。このPADマップをweb上に各々のAED配置をマッピングしました。
AED配置をマップに重ねたところAED配置がずれていることが確認できました。さらにAEDの設置状態を現地で目視により確認しています。AEDが配置され年月が経過していることもあり、AEDの電池切れや本体が無い箇所も存在しています。一般市民が直ぐに使用できるPADマップの更新が不可欠です。そのためにはPADマップの現状を確認することが早期PADの鍵になると考えます。

活動日

2023年度(まとめ)

活動内容

先行研究を調査したところPAD(AED)マップに関する研究は、32編ありました。医療系雑誌に上梓されていたのが16編、残りの16編は工学建築系・地図系や政策論系の学術雑誌でした。いずれの研究においてもマップ(地図)の正確性と更新継続が課題となっていました。
ホームページ公開されている京都市山科区内および伏見区醍醐地区の①京都府公式ホームページ(以下、京都府AED)、②日本AED財団ホームページ(以下、AED財団)、③日本全国AEDマップ(以下、全国AED)の情報をもとに現地調査を実施しました。京都府AEDは、174か所(山科地区152か所、醍醐地区22か所)が登録されており、AED財団は、301か所(山科地区246か所、醍醐地区55か所)、全国AED333か所(山科地区277か所、醍醐地区56か所)が登録されていました。PAD(AED)のマップ登録として1種類のみのPAD(AED)マップ登録が259か所、2種類のマップ登録が158か所、3種類すべてのマップ登録されていたのが48か所でした。本来は、3種類すべてのPAD(AED)マップに登録されていなければなりません。
 現地調査項目として1.住所、2.建物名称、3.AEDの設置場所、4.AED設置階数、5.同一建物でのAEDの数、6.設置施設の利用時間 7.敷地外への持ち出しの有無、8.AEDボックス設置の有無 9.使用者の制限 10.AED製造会社名、11.インジケータ表示、12.AED設置管理者タグ、13.設置日 14.バッテリー装着日、15.AED設置表示、16.AED設置表示の種類(ステッカーなど) 17.AED表示(背景)色 18.表示板の文字の色、19.AED写真、の19項目を登録しました。

活動日

2024年10月1日

活動内容

 京都市山科区内と伏見区醍醐地区のAED配置を①京都府AED、②AED財団、③全国AEDのマップ情報をもとに現地調査を実施しました。AED(以下、PAD)マップ登録として3種類すべてのマップ登録されていたのは、48か所でした。本来は、3種類すべてのPADマップに登録されていなければなりません。
 そこで、一般市民が心肺停止に遭遇しAEDを実施しようとすると、AEDの存在確認と正常動作確認が必要です。今回の研究として居住地周辺のAEDの管理に自身の健康管理を組み合わせ,生活習慣病予防のためのウォーキングとしてPADマップを巡回する手法を検討しました。ルート作成においては,一定期間内で近隣のAEDを網羅し,一日当たりの歩行量が平均化するような制約を用いることで,健康維持に最適なものとなるよう期間内の運動量を調整しました。この研究成果として「生活習慣病に効果的な散歩経路の提示によって健康とAEDを共にケアするアプリ;小向修平,関根和弘,吉田俊介,第29回日本バーチャルリアリティー学会(名古屋市2024.09)」にて発表しました。

研究概要

 自動体外式除細動器(以下、AED)を用いた早期除細動は、心停止傷病者を救命するうえで重要です。AEDの適正配置のガイドラインでは、心停止から5分以内の除細動が有効であると言われています。我が国では、多くのAEDが普及し、各所に設置されています。しかし、AEDマップ等は新たに設置されたAEDが登録されていないなど、更新されていないものも多く、緊急時にAEDを見つけ出し、早急に使用することは必ずしも容易とは言えません。そこで本研究ユニットでは、現在設置されているAEDとAEDマップの相違についての検討を行い、問題点の抽出と改善案を算出し、AEDの早期発見と早期除細動の実現を成果達成目標とし検討を行います。

研究目的・意義

 AEDを用いた早期除細動は、心停止傷病者を救命するうえで重要です。AEDの適正配置に関するガイドラインでは、心停止から5分以内の除細動が有効であると言われています。心停止患者が発生した場合は、その場に居合わせた一般市民(bystander)が胸骨圧迫心臓マッサージと早期に除細動をすること(Public Access Defibrillation:以下、PAD)が重要です。我が国では多くのAEDが普及し、公共施設・商業施設や学校などに設置されており、AED設置の案内表示板やAEDマップを各自治体が作成するなど、一般市民に周知する取り組みを行っていますがAEDマップ等は新たに設置されたAEDが登録されていないなど、最新バージョンに更新されていないものも多いため、緊急時に近くのAEDを見つけ出し早急に使用することは必ずしも容易とは言えません。
 そこで本研究ユニットでは、現在設置されているAEDとAEDマップの相違についての検討を行い、問題点の抽出と改善案を算出し、AEDの早期発見と早期PADの実現を成果達成目標とし検討を行います。改善策を見出し常に最新バージョンのAEDマップとなり迅速なAEDが可能となり救命率の向上に寄与するものと考えます。

研究背景(重点研究分野選択理由)

 我が国で多くのAEDが普及し、公共施設・商業施設や学校などに設置され、AED設置の案内表示板やAEDマップを各自治体が作成するなど、一般市民に周知する取り組みを行っています。しかし、AEDマップ等は新たに設置されたAEDが登録されていないなど、最新バージョンに更新されていないものも多く、緊急時に近くのAEDを見つけ出し、早急に使用することは必ずしも容易とは言えません。
 傷病者が発生して119番をして、救急隊が現場到着するまで約9.4分(R3年救急救助の現況)のレスポンスタイムがあります。傷病者の元にはさらに2‐3分の時間を要します。救急隊が除細動実施をするまでに119番の覚知から10-12分程度を要してしまいます。救急隊の増隊や119番通報システムが向上したとしても、AED実施まで目標の5分という壁を破ることは難しいです。そのため、市民によるPADの実施が、効果が高く有効ですが、AEDマップの更新がない限りAEDマップは単なる古い地図にしかなりません。そのため、Digital Transformation(以下、DX)や情報工学に詳しい情報工学科とユニットを連携しました。各組織が作成したAEDマップの確かさを確認・評価し、web上で更新が簡単に可能なのか研究し課題の抽出を行います。

研究計画・方法

2023年度

  • 4月~5月:先行研究調査
    国内外の先行研究を調査し、現時点での課題等を発見します。
  • 5月~10月:現地調査
    京都市山科区内のAED設置場所と、京都市AED設置施設検索システムに掲載されているAED情報に差異がないか実際に足を運び現地調査を行います。調査項目は以下の通りです。
    • 実際に設置されているのか、常時使用可能なのか、持ち出しは可能なのか。
    • 登録情報との差異はないか(使用可能時間や詳細な設置場所など)
  • 10月~11月:問題点・課題の抽出
    4月からの先行研究調査と5月からの現地調査の結果から、早期PAD実現の弊害となっている問題点および課題の抽出を行います。
  • 12月~3月:早期PAD実現のためのシステムの考案
    上記で挙がった問題点および課題から、改善点を検討します。その際、病院前救護だけでなく、情報技術分野の視点からも改善点を検討し、早期PAD実現のためのシステムを考案します。

2024年度

  • 4月~7月:システムの実装、データ解析
    上記で考案したシステムと、従来のシステムでAED実施までに要する時間の比較検討を行います。比較項目は以下の通りとします。
    • AED発見までに要した時間
    • AED使用開始までに要した時間
    • AEDを取得するのに要した距離
    被験者は未定ですが、バイアスがかからないようランダム化して試験を実施します。
    これらで得たデータを解析し、早期PADが実現可能か検討をします。
  • 8月~10月:データ整理
    これまでに得られたデータを整理し、論文執筆、学会発表に向けての準備を行います。
  • 11月~3月:論文執筆、学会発表
    論文執筆ならびに学会発表の準備を行います。
    なお、論文投稿先ならびに発表する学術集会は未定です。

期待される研究成果および地域・社会への発信

 各組織は、AEDマップやAED案内図などの作成を実施しています。しかし、AEDマップなどは新たに設置されたAEDが登録されていないなど、最新バージョンに更新されていないものも多く、緊急時に近くのAEDを見つけ出し、早急に使用することは必ずしも容易とは言えません。
 そこで本研究ユニットでは、現在設置されているAEDとAEDマップの相違についての検討を行い、問題点の抽出と改善案を算出し、AEDの早期発見と早期PADの実現を成果達成目標とし検討を行います。改善策を見出し常に最新バージョンのAEDマップとなり、迅速なAED実施が可能となるため救命率の向上に寄与するものと考えます。

研究期間

2023年4月1日 ~ 2025年3月31日

ユニットメンバー

氏名 所属 職位
氏名関根 和弘 所属京都橘大学健康科学部救急救命学科 職位教授
氏名吉田 俊介 所属京都橘大学工学部情報工学科 職位教授
氏名片岡 祐介 所属京都橘大学工学部情報工学科 職位准教授
氏名澤田 仁 所属京都橘大学健康科学部救急救命学科 職位専任講師
氏名斎藤 汐海 所属京都橘大学健康科学部救急救命学科 職位助教
氏名杉木 翔太 所属京都橘大学健康科学部救急救命学科 職位助教
氏名郷田 爽真 所属広島県庁 職位客員研究員