研究代表者:関根 和弘(京都橘大学 健康科学部 救急救命学科・教授)
病院外心停止(OHCA)に対する、バイスタンダーによる早期除細動実現に関する研究
①医療と情報技術・データサイエンス
2023年4月1日 ~ 2026年3月31日
自動体外式除細動器(以下、AED)を用いた早期除細動は、心停止患者を救命するうえで重要である。AEDの適正配置のガイドラインでは、心停止から5分以内の除細動が有効であると言われている。我が国では、多くのAEDが普及し、各所に設置されている。しかし、AEDの地図は新たに設置されたAEDが登録されていないなど、更新されていないものも多く、緊急時にAEDを見つけ出し、早急に使用することは必ずしも容易とは言えない。そこで本研究ユニットでは、現在設置されているAEDとAEDの地図の相違についての検討を行い、現状と課題を検討し、誰でも簡単にAEDの登録を行うことができるアプリケーションの開発を行う。
AEDを用いた早期除細動は、心停止患者を救命するうえで重要である。AEDの適正配置に関するガイドラインでは、心停止から5分以内の除細動が有効であると言われている。心停止患者が発生した場合は、その場に居合わせた一般市民(bystander)が胸骨圧迫心臓マッサージと早期に除細動をすること(公共アクセス型AED:Public Access Defibrillation(以下、PAD))が重要である。しかし、我が国では多くのPADが普及し、公共施設・商業施設や学校などに設置されている。また、PAD設置の案内表示板やPADマップを各自治体が作成するなど、一般市民に周知する取り組みを行っている。そこで本研究ユニットでは、現在設置されているAEDとAEDマップの相違についての検討を行った。公的機関がweb上にアップしているPAD地図を抽出した。①京都市ホームページAEDマップ、②日本AED財団マップ、③日本全国AEDマップ、の3つから山科区内と伏見区醍醐地区を抽出した。これらのPADマップを確認したところマップ上のPADの位置にばらつきがあることが判明した。
またPADマップ等は新たに設置されたPADが登録されていない、設置されている施設がなくなっている、など更新されていないものも多かった。そのため、緊急時に近くのPADを見つけ出し早急に使用することは必ずしも容易とは言えない。
2024年には、PADマップと健康増進を組み合わせたアプリケーション(以下、アプリ)を開発し、散歩をしながらPADの登録をするという機能を盛り込んだ(第29回日本バーチャルリアリティー学会発表;名古屋市)。しかし、この機能はアプリ制作する場合に地域限定であれば可能だが、全国展開するためには開発に時間を要し現実的でない。そのため、PADマップと連携可能なアプリの開発をしなければならないと考える。市民が自主的行動にアプリを使用しPADの場所を特定し修正を継続していければ、最新のPADマップが作成されることとなる。
我が国で多くのAEDが普及し、公共施設・商業施設や学校などに設置され、AED設置の案内表示板やAEDマップを各自治体が作成するなど、一般市民に周知する取り組みを行っている。しかし、PADマップ等は新たに設置されたAEDが登録されていないなど、2023ー2024年の研究により、最新の地図に更新されていないことが判明した。これでは、緊急時に近くのPADを見つけ出し、早急に使用することは難しい。傷病者が発生して119番をして、救急隊が現場到着するまでの時間は、R3(2021)年は約9.4分だったものが、R4(2022)年には10.3分(R4年救急救助の現況)と遅延している。傷病者の元への到着はさらに2‐3分の時間を要する。つまり救急隊が除細動実施するまでには覚知から12‐14分を要してしまう。救急隊の増隊や119番通報システムが向上したとしても、AED実施まで目標の5分という壁を破ることは難しい。そのため、市民によるPADの実施は、効果が高く有効であるが、PADマップの最新のバージョンがない限りそれは、画餅である。2023年度の調査研究において、PADマップが必ずしも正確でないことが判明した。2024年は、散歩機能を持たせたアプリを開発した。今後は、さらにアプリと地図、PADの更新などをDigital Transformation(以下、DX)を用いてweb上で更新が簡単なシステム構築の課題に対処する。
2023年度でPEDマップの状況の確認を実施した結果、マップ間で突合できないAEDがあることが判明した。原因として設置した段階でマップに登録したものの、PADマップの更新がされていない、AEDの機器自体が廃棄処分となっている、2023年現在でPADマップ上に載っている建物がないなどが現地を確認して判明した。2024年度は、PADマップ自動更新システムの構アプリを作成した。その作成したアプリを第29回日本バーチャルリアリティー学会(名古屋市)に発表した。また、当学学生らに実施した蘇生講習会の質問紙による結果を日本救護救急学会(東京都豊洲)で発表した。
情報工学科の教員や学生との協働により、AED設置場所を特定し使用可能かどうかの各種アプリケーション(以下、アプリ)を複数作成し、コンペティションを実施する。AED財団等でも同様な試みは実施しているが、ボランティアベースの活動であり更新に限界がある。今回のアプリは、健康系のアプリを組み入れ、ゲーミフィケーション要素(ゲームの要素や思考法をゲーム以外の分野に応用すること)を取り入れて、アプリを使用する者へインセンティブが与えられるようにAEDマップが自動更新可能なようなシステムを目指す。自動更新が可能かどうかを数年継続してみていくことが重要と考える。利用率や救命率までの計測は心肺停止記録情報を取得している市消防局と連携をしなければデータ取得が不可能であるため、今回のデータを報告書として持参し今後の共同研究を検討する。
・2025年4 - 10月
・2025年10月 - 2026年2月 論文執筆、学会発表。発表や論文投稿先は、救急医療系や工学系学会を予定している。
2023年度の調査研究でPAEDマップが正確性を欠くものであると判明した。PADマップの更新はあまりされておらず、またAED機器自体の電池切れや廃棄処分になっており、PADマップに反映されていなかった。これでは、緊急時に近くのPADを早急に使用することはできないと考える。
2024年度は、PADマップの更新作業の改善策を見出し最新バージョンのPADマップとなるシステムの構築をはかることで迅速なAED実施が可能となるため救命率の向上に寄与するものと考える。医療系や工学系の学会発表や論文投稿にて社会に貢献できると考える。2025年度は、自動更新可能なアプリの開発に全力を注ぎ、全国的な展開を見据えて実施していく。学会発表と論文投稿も並行して実施していく。
ユニットメンバー
氏名 | 所属 | 職位 |
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氏名:関根 和弘 | 所属:京都橘大学 健康科学部 救急救命学科 | 職位:教授 |
氏名:吉田 俊介 | 所属:京都橘大学 工学部 情報工学科 | 職位:教授 |
氏名:片岡 祐介 | 所属:京都橘大学 工学部 情報工学科 | 職位:准教授 |
氏名:斎藤 汐海 | 所属:京都橘大学 健康科学部 救急救命学科 | 職位:助教 |
氏名:野口 佐弥香 | 所属:京都橘大学 健康科学部 救急救命学科 | 職位:助教 |
氏名:澤田 仁 * | 所属:朝日大学 | 職位:講師 |
氏名:郷田 爽真 * | 所属:広島県庁 | 職位:客員研究員 |
*共同研究者(外部・客員研究員)