【文化交響Vol.4 in 大阪・関西万博「EXPO共鳴フェス」】 もしも相棒がロボットだったら?!
生成AIから響感AIへ。
-ロボットと暮らす未来、あなたならどう描きますか-
ロボット技術は私たちの生活に融けこみ始めました。「人とロボットが共生する社会」はすぐそばにあります。そんな近未来の社会を解く鍵になるのが、オムロン株式会社が開発した卓球ロボット「FORPHEUS(フォルフェウス)」です。人と機械の融和をコンセプトに、人の能力を拡張し共に成長することを指向したロボット。そしてその「頭脳」を大きく拡張させたのが株式会社スクウェア・エニックス。「人のやる気」を引き出すメタAlを実装しました。文化交響第4弾では、次世代のトレンドテックであるAlロボティクスの「頭脳と身体」を紐解きます。心の扉を開いて、共に、未来への新しい世界線を描きませんか。さぁ、近未来会議を始めましょう!
※フォルフェウス第6世代に、スクウェア・エニックスの協力により、人工知能「メタAl」の技術が搭載されています。
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もしも相棒がロボットだったら...?!
大阪・関西万博にて、AIロボティクスが拓く未来をテーマに特別講演会開催
2025年6月18日(水)、大阪・関西万博のシグネチャーイベント「EXPO共鳴フェス」にて、京都橘大学新学部・新学科開設記念講演会【文化交響Vol.4 ロボットと共に生きる時代へ。AIロボティクスが拓く豊かな社会とは-もしも、相棒がロボットだったら、どんな未来を描きますか?-】を開催しました。
講演会では、お笑いコンビ・よゐこの有野晋哉氏が司会を務め、オムロン株式会社 執行役員 技術・知財本部長 兼 オムロン サイニックエックス株式会社 代表取締役社長・諏訪正樹氏、株式会社スクウェア・エニックス リードAIリサーチャー・三宅陽一郎氏、本学工学部長の松原仁教授(人工知能学会元会長)が、AIロボティクスが創り出す未来社会について語り合いました。約250名が来場し、「ロボットが相棒」である近未来の世界戦に胸を躍らせました。
よゐこ・有野晋哉氏
諏訪正樹氏
三宅陽一郎氏
松原仁教授
AIロボティクスという新しい技術は、私たちの生活に深く、融け込み始めています。
講演会では、オムロン株式会社(以下、オムロン)が開発された卓球ロボット「FORPHEUS(フォルフェウス)」を具体例として紹介しました。
卓球ロボット「FORPHEUS(フォルフェウス)」
写真提供:オムロン株式会社
フォルフェウスは、オムロンのコア技術である「センシング&コントロール+Think」技術を象徴するロボットです。そして、オムロンが考える人と機械の未来の関係性として、機械が人の創造性や可能性を高める「融和」の姿を具現化したものです。最新モデルの第9世代では、人と機械の双方向コミュニケーションをコンセプトに生成AIを活用。機械側から相手の状況に合わせた提案を行うことで、人と機械が対話しながら、より長くラリーが続けられるようになりました。また、株式会社スクウェア・エニックス(以下、スクウェア・エニックス)との共同研究により人工知能(メタAI)が搭載された第6世代は、プレイヤーの競技レベルや表情、心拍数などから感情を推定し、ラリー内容を調整することでモチベーションを高める仕組みが実装されています。このように、フォルフェウスは人と機械の融和を体感できるロボットとして注目を集めています。
卓球ロボット「フォルフェウス」に、よゐこ・有野晋哉さんも挑戦! 2025年5月下旬、有野氏と松原教授は、第9世代フォルフェウスとのラリーを体験するため、 |
講演会の中では、登壇者の皆さんが手掛けられたプロジェクトについても紹介。
「ゲームが社会課題を解決することはありますか?」という来場者からの質問に対し、三宅氏は、「メタAI」「キャラクターAI」「スパーシャルAI」といわれる3種類のゲームAIの特徴とこれらを連携させることによってどのうようなことが可能になるか、具体例を交えて丁寧に説明されました。ゲームが大好きな有野氏も興味をもって質問を投げかけていました。
さらに、今回のメインテーマである「もしも、相棒がロボットだったら、どんな未来を描きますか?」という問いについて、松原教授から有野氏へ「もしも相方がロボットだったら、どうですか?」 と質問。
コントは相方との呼吸や会場の雰囲気、来場者の興味の度合いなどをつかみながら繰り広げられる。まさに、五感を研ぎ澄ませながらの話術が求められます。
有野氏からは、「ロボットは、人間よりも"賢い"というイメージがありますよね。だから、そこを活かしたコントがつくれると面白いのかなと思います。ボケかツッコミかというと、ロボットはボケの方かな」と回答。それを受けて、松原教授からは、20年程前に話題となった漫才ロボットについて考察するなど、さまざまな角度から、ユニークな意見が飛び交っていました。
最後には、次世代を担う中高生にむけて、激励のメッセージが届けられました。
諏訪氏は「空気をよむ力をもつロボットも面白いと思う」と語り、頭脳であるAI、身体である機械、五感であるセンサーが三位一体となって進化することが大切だと言及されました。
三宅氏は「ゲームAIも、プレイヤーに応じて自動的に内容を生成する時代へと移行している」と述べ、AIが人間を理解し適応する技術の進化を強調しました。
松原教授は「技術は人の幸せのために使われるものである。これからのロボット開発には、『今ある技術を使って何を創り出すか』という、日々の生活や社会と結びつける視点が不可欠だ」と来場者へ語りかけていました。
本イベントは、2026年4月に新設予定の工学部ロボティクス学科※およびデジタルメディア学部※の開設記念講演会として開催されたもので、AI・ロボティクス技術の発展が社会に与える影響や、人間との関係性をどう築いていくかを多様な視点で考える機会となりました。
※いずれも仮称。2026年4月開設予定(設置構想中)。計画内容は予定であり変更することがあります。
ロボティクスやAIの分野は、日本の産業を牽引するだけでなく、福祉・教育・文化といった幅広い領域においても重要な役割を果たし始めています。本学では、先端技術と人間社会との架け橋となる人材の育成をめざし、これからも実社会とつながる学びの場を提供してまいります。
【登壇者プロフィール】
諏訪正樹 氏
【オムロン株式会社 執行役員 技術・知財本部長 兼 オムロン サイニックエックス株式会社 代表取締役社長】
1997年、立命館大学理工学研究科博士後期課程修了。博士(工学、立命館大学)。オムロン株式会社入社後、画像・光センシングの研究開発に従事。技術・知財本部技術専門職として籍を置きながら、2018年2月オムロン サイニックエックス株式会社代表取締役社長に就任。2022年3月同社 技術・知財本部長 兼 技術・知財戦略室長に就任。2022年4月同社執行役員に就任。2024年4月より現職。奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科、九州工業大学生命工学研究科客員教授。人工知能学会 理事。
三宅陽一郎 氏
【株式会社スクウェア・エニックス リードAI リサーチャー】
京都大学で数学を専攻、大阪大学(物理学修士)、東京大学工学系研究科博士課程修了。博士(工学、東京大学)。2004年よりデジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事。著書に『人工知能の作り方』『ゲームAI技術入門』『戦略ゲームAI解体新書』、共著に『FINAL FANTASY XVの人工知能』『ゲーム情報学概論』(CEDEC AWARDS 2018 著述賞)『数学がゲームを動かす!』など多数。『大規模デジタルゲームにおける人工知能の一般的体系と実装 -FINAL FANTASY XV の実例を基に-』にて2020年度人工知能学会論文賞を受賞。
松原仁 氏
【京都橘大学工学部長・工学部情報工学科 教授】
東京大学大学院情報工学専攻博士課程修了。工学博士。通商産業省工業技術院電子技術総合研究所(現 産業技術総合研究所)、公立はこだて未来大学教授、東京大学教授を経て、2024年4月より京都橘大学教授。専門は人工知能。ゲーム情報学、観光情報学研究に取り組む。人工知能学会元会長、情報処理学会前副会長。人とAIで手塚治虫の"新作漫画"を制作した「TEZUKA2020」、AI作家による小説で「星新一賞」入賞をめざすなどユニークなプロジェクトを多数手がけている。
2026年4月より、工学部ロボティクス学科教授就任予定(※)。
<司会>有野晋哉 氏【お笑いコンビ・よゐこ】
松竹芸能所属。1972年生まれ、大阪府出身。
90年、お笑いコンビ・よゐこを結成。CSフジテレビONE「ゲームセンターCX」の出演により「有野課長」の愛称で世界的に親しまれている。ABC「極上口福!Re:Re:レストラン」やMBS「Aぇ!!!!!!ゐこ」、TVO「よゐこ有野 この街、攻略しとく?」などバラエティ番組の他、25年春には舞台「関西ジュニア原石まつり」作・演出も行った。また、ドラマ・映画など多岐に渡り活躍中。
Special!
クロストーク
京都橘大学新学部・新学科開設記念講演会「文化交響-もしも、相棒がロボットだったら、どんな未来を描きますか?-」が6月18日(水)、大阪・関西万博を舞台に開催された。よゐこ・有野晋哉さんをファシリテーターとして迎え、オムロン(株)が開発している「フォルフェウス」を題材にAIロボティクスが拓く未来社会について、第一線の研究者、エンジニアが語り合った。約250人が「ロボットが相棒」である近未来の世界線に胸を躍らせた。
フォルフェウスで体感
コミュニケーションロボットの進化
有野 卓球ロボット「FORPHEUS(フォルフェウス)」を私も体験してきました。開発のきっかけは何だったんですか?
よゐこ・有野晋哉氏
諏訪正樹氏
諏訪 機械が人の可能性や創造性を高める「融和」の世界を示そうと思ったのです。だからフォルフェウスは人に勝つことを目的としていません。ラリーが続いて人と機械とが一緒に楽しくプレーすることをめざしました。
有野 「お上手ですね」など、声もかけてくれました。
諏訪 現在、人と双方向のコミュニケーションができる第9世代まで進化しています。特徴的だったのは三宅さんにご協力頂いた第6世代で、相手の気持ちを理解してプレーできるようになったのです。ラリーが単調になって飽きていると感じれば、わざと難しい球を返します。気を引き締めさせているのです。逆に、返しやすい球を打つことで、相手のやる気を高めてあげたりもします。カメラや各種のセンサーを使ってプレーヤーの表情、心拍数、動作などを解析することで、フォルフェウスは相手の感情を読み取っています。
三宅 このとき活用したのが、ゲームにも用いている「メタAI」です。メタAIとは、プレーヤーの感情を理解しゲーム全体を制御するための技術です。様々なバイオセンサーから得た生体情報などをもとに、メタAIがプレーヤーの感情を読み解き、その状況に応じたプレーを判断してフォルフェウスに指示を送っています。
有野 近い将来「人によりそうロボット」も誕生するのでしょうか。
松原 AIはあくまでも知能であって、身体はもっていません。人の五感のような感覚は、理解していない。一方で、ロボットは身体をもっており、目や耳などに相当するカメラやセンサーを搭載することもできます。今、両者を融合させる「AIロボティクス」が注目を集めています。フォルフェウスはまさにその代表例。今後、AIに身体をもたせて、様々な経験をさせることで、人とは異なる感覚・感性を持つロボットが誕生すると思います。
三宅 私たち人間は、「少し疲れてる?」とか相手の身体を気遣うことから関係性がはじまります。AIも身体をもっていないと感情は育ちにくく、環境と知能を結ぶものとして、身体が必要なのです。
空気を読むロボットが
相棒に?!
有野 人とロボットが一緒に暮らしたり、ロボットが人のパートナーになる社会も本当にやってきそうですね。
諏訪 お掃除ロボットはすでに暮らしに浸透していますよね。次は洗濯物をたたむロボット、その次はお料理ロボットが広がり、誰もがロボットを活用する時代になると予想しています。次世代のフォルフェウスでは、空気を読む力をもつのも面白いと考えています。プロ選手とプレーしたときに、相手がプロであることをわかったうえでわざと「上手だね」とフォルフェウスが言ったとしたら、まるで漫才みたいで面白いですよね。
松原 空気を読むことはAIやロボットを考えるうえで重要な要素です。これまでのロボットは、「今日は暑いね」と言うと「℃です」と答えていました。これは事実を伝えていますが、心が通じているようには感じませんよね。それに対して「冷たいお茶を用意しましょうか」とか「ビールがおいしそうですね」と、人に合わせて対話できるロボットがいるとどうでしょうか。家族の一員として話し相手になってくれるロボット、どんな話でもにこやかにうなずきながら聞いてくれる存在であれば、需要がありそうです。介護現場では、雑談を通して、患者の体調を察知し医師や看護師に伝えることなども期待できますね。
三宅 人とロボットが共生していくためには、人のことをより深く理解することが大切です。私は、エンジニアの視点から人間探究をしています。トライ&エラーをしながらロボットが人間を理解していくプロセスを研究することが面白いですね。
松原仁教授
三宅陽一郎氏
諏訪 AIロボティクスは、いずれいろんなことができるようになります。松原さんのお話にもあった人間とは異なる感性・機能をもつロボットとどのように付き合っていくか。これを考えることがとても大切なことです。
松原 多様な立場の人が誰のために、何のためにロボットを開発するのかを話し合う場が必要です。AIやロボットを仲間として柔軟に受け入れ、自分の世界を広げるために使おうという姿勢が、今後、日本の研究の強みになると思います。
AIロボティクスを学ぶ
「こんな社会をつくりたい」が
原動力に
有野 AIやロボットに携わるのは理系というイメージがありますが、実際のところはどうですか?大学に期待することはありますか?
三宅 私は子どものころは、小説ばかり読んでいました。今の道につながる原点は、『宇宙戦艦ヤマト』に登場するロボットの「アナライザー」に憧れたことです。アナライザーは頭脳明晰(めいせき)だけど、酔っぱらって話し相手になってくれることもあります。そんなロボットがいる未来をめざし、理系へ進みました。AIやロボットをつくる根本には「こんな社会をつくりたい」という思いがあります。ロボティクスは非常に懐の深い学問です。文系・理系の枠に捉われず、一度自分の興味があることとロボティクスを紐づけて考えてみると、新しいアイデアや未来の可能性がきっと生まれるでしょう。
諏訪 ロボットの頭脳であるAI、身体である機械、五感であるセンサーが三位一体となって進化することで、人と共生するロボットは誕生すると思います。この分野は、日本の産業の強みであり、世界をリードする起爆剤になるはず。未来のために、難しい社会的課題に対して、企業と大学が一緒に取り組んでいきたいですね。
松原 2026年度に新設予定の工学部ロボティクス学科※では、メカトロニクスやセンサー、AIの技術をしっかりと学び、実装し、社会で活用できる力を養います。不可欠なことは、「今ある技術を使って何を創り出すか?」という、日々の生活や社会と技術とを結びつける視点です。ときには、固定観念を打ち破るような、柔軟な発想も必要です。AIロボティクスと発展する未来は、希望と可能性に溢れています。多様な人が、失敗を恐れず夢をもってチャレンジすることで、人の幸せ、新しい社会をつくりだすことができると信じています。有野 未来をつくる面白い分野だと興味が湧きました。「人の心を知りたい」と思う人が、ロボット開発をすると、優しいロボットが生まれそうですね。
※仮称。2026年4月開設予定(設置構想中)。計画内容は予定であり変更することがあります。
クロストーク[PDF (3.57MB)]
【2025年7月13日(日)読売新聞朝刊に掲載】
【関連サイト】
- 京都橘大学 新学部・新学科 特設サイト「ぜんぶ、越えてく。」
- 「文化交響Vol.1-文化の創造と伝統の継承。次世代のクリエイターへ-」
- 「文化交響Vol.2 大津春の陣 固定観念を討ち、知の秘境へ挑む!~歴史・文化・AIがひらく未来への扉~」
- 【文化交響Vol.3 × 大カプコン展―世界を魅了するゲームクリエイション】 君の"好き"は、世界を変える"チカラ"になる! ゲームが創る未来の文化とは?
- 松原教授の夢と研究の世界に出会える「ヒトシの部屋」
- オムロンが目指す人と機械の未来_コア技術の象徴「FORPHEUS(フォルフェウス)」(オムロン株式会社 WEBサイト)