「第3回 Digital縁日 in 日本新薬」で学生作品13点を出展!

 2025年10月10日(金)、日本新薬株式会社(本社:京都市南区)において、地域のDX推進と人材育成を目的に開催された第3回「Digital縁日」(共催: 日本新薬株式会社・第一工業製薬株式会社)に工学部情報工学科、経済学部経済学科、大学院情報学研究科の学生・院生14名がオリジナル作品13点を出展しました。

 「Digital縁日」は多くの地場企業が参加し、DX推進の事例紹介のほか、生成AIを活用した業務改善アプリ操作の体験、参加企業×学生×京都市で学び合う生成AI活用ワークショップなど、多彩なプログラムで開催されました。
 展示ブースでは、工学部情報工学科の杉浦昌・吉田俊介・西出俊・大場みち子・加藤諒研究室に所属する学生・院生が自身の作品開発までのエピソードや駆使した技術の詳細、実用に向けた今後の展望を来場者に説明。参加者同士での活発な意見交換が行われました。

イベントに訪れた岡田知弘学長に作品を紹介

 今回の出展は、学生自身の研究成果を企業に向け発表する貴重な機会となりました。参加した学生からは、「技術的な視点に加え、コスト面や社会への応用可能性に関する質問をいただいたことで、実装段階に向けた改善点や今後の改善の方向性のヒントになりました」との声がありました。今回の出展が昨年に続き2度目という学生も多く、こうした産学官等の交流により実践的な視点や新たな気づきが得られる貴重な機会となりました。

 本学は今後も、産学官連携により地域の産業を担うAI・情報人材およびグローバル人材の養成をめざし、分野横断的な教育・研究を推進してまいります。

<展示作品一覧>

●大塚匡さん、中川龍馬さん(工学部情報工学科4回生)
  軸丸若可菜さん(経済学部経済学科3回生)
『新・ミライケータイプロジェクト』
【概要】
 ミライ性を持ったモバイルサービスの開発に重点を置いた、4大学(はこだて未来大学、神奈川工科大学、法政大学、京都橘大学)合同の開発プロジェクト。ミライ性とは通常のアプリ開発に加え、問題解決を行い、日常の価値を高めることを指す。前年までのプロジェクト体制の刷新の意味を込め、新・ミライケータイプロジェクトと名付けた。

●神野莉紋さん(工学部情報工学科4回生)
『影絵のデジタルアート』
【概要】
光の強さによって2種類の情報を切り替えて表示できるQRコードを開発した。通常の光では1つ目の情報を提示し、強い光を照射することで影絵として隠された2つ目の情報が現れる。
 このQRコードは光の強さで情報が切り替わる2層構造となっており、新たな体験価値を生み出す。謎解きゲームの暗号や限定情報の演出への応用を期待する。本技術は、中国のアーティスト・风雪阿虎による作品に着想を得ている。同作品では、白色の反射特性と影の効果を活かして絵の見え方を変化させる表現手法が用いられており、本技術ではこれをQRコードに応用した。Blenderによるシミュレーションで技術的な実現性を確認し、現在は実環境での実現に向けた開発を進めている。

●久保田葉月さん(工学部情報工学科4回生)
『トラッキング機能Live2Dによるオリジナルアバター』
【概要】
 Live2D Cubism Editorで作成しました。自作原画をパーツ分解し、180以上のパーツと243以上のワープデフォーマ、パラメータで滑らかな動きを実現。 違和感がないよう見えない部分も丁寧に描き込みました。
 昨年の作品から大きく改良し、手を振る動作ができるように手のパーツを増やしました。これにより、より豊かな表現が可能になりました。
 操作にはPC内蔵カメラで動かせるトラッキングソフトVTube Studioを使用しています。昨年のLive2D Creative Awards11にて応募致しました。

●樋口雅裕さん(工学部情報工学科3回生)
『LSS(Location Signage System)』
【概要】
  この装置は、大学を出発するバスや周辺の鉄道など、公共交通機関の運行状況をリアルタイムで確認できる電子掲示板である。京阪バス、JR各線、市営地下鉄東西線など、複数の交通機関に対応しており、これらの運行情報はインターネット上で公開されているオープンデータから取得している。
 取得した情報には、バスの行き先、路線番号、次の発車予定時刻、運行状況(通常運行・遅延・運休など)が含まれており、それらを自動的に整理し、視認性の高い形でディスプレイに表示する。たとえば、「山科駅方面の26A系統 14時18分発 通常運行」といった具体的な文言が表示され、利用者が瞬時に状況を把握できるように工夫した。
 さらに、JRや地下鉄に関しても遅延の有無を表示する機能を備えており、異なる交通機関の情報を併用でき、効率的な交通手段を判断できる。表示内容は一定間隔で自動的に更新されるため、利用者は操作の手間なく、常に最新の情報を得ることができる。

『ルービックキューブ solver machine』
【概要】
 本装置は、ルービックキューブを自動的に揃えることを目的として設計・製作された自動解法装置である。装置の駆動部には4つのアームモジュールを配置しており、それぞれのモジュールにはステッピングモータが搭載されている。
 合計で8基のステッピングモータを使用することで、ルービックキューブの各面を精密に回転させることが可能となっている。アームは立体的な動作を組み合わせて、対象となるキューブを確実に保持しつつ、解法アルゴリズムに従った回転操作を実行できるように設計されている。
 さらに、ルービックキューブの初期状態を認識するために、WEBカメラを用いた自動スキャン機構を導入している。カメラで撮影された映像から各面の色を解析し、その情報をもとにキューブ全体の配置をデジタル的に再構築する。
取得した色情報はソルバアルゴリズムに入力され、最短手順に近い解法が自動的に計算される。その後、計算結果に基づいてモータ制御信号が出力され、実際のキューブ操作が自律的に実行される仕組みである。
 このように、本装置は機械的なモータ制御、映像処理による色認識、アルゴリズムによる解法計算といった複数の技術要素を統合することで、完全自動でルービックキューブを揃えることを可能としている。

●吉年大地さん(大学院情報学研究科修士課程1回生)
『農作業支援のための深層学習モデルを導入したドローンシステム』
【概要】
 日本の農業が抱える労働力不足や高齢化といった社会課題の解決を目指し、小型かつ安価なドローン(DJI Tello)と深層学習モデル(Single Shot MultiBox Detector: SSD)を組み合わせた、低コスト・汎用的な農作業支援システムの開発を行ったものである。
 従来のスマート農業技術は高価格・高コストゆえに普及が進みにくい現状がある。
本システムは、ドローンのリアルタイム映像に対して SSD モデルによる物体検出を行い、農作物の状況把握、生育状態の追跡などを支援する。実験では、ドローンカメラとスマートフォンカメラの検出精度比較や、飛行中における検出精度の距離依存性を評価した。その結果、ドローンカメラは近距離(約 30cm)で高い検出性能を示したが、遠距離や解像度
低下による精度劣化も確認された。 今後は、ブレ補正や画像解像度補完技術の導入、および農作物特化モデルの開発により、より実用的な農業支援システムの実現を目指す。
 本研究は、小型ドローンと深層学習技術の組み合わせが、持続可能な農業の推進に有効な手段となる可能性を示すものである。

●松本穂莉さん(大学院情報学研究科修士課程1回生)
『深層ネットワークを用いた描画シーケンスの学習と生成による描画支援システムの構築』
【概要】
 本論文は、ユーザーが描画の途中段階で介入し、生成AIから洗練された出力を得られるインタラクティブな描画支援システムを提案しています。
 畳み込みエンコーダ・デコーダモデルを用い、ユーザーの修正に強いノイズ拡張学習を行うことで、途中編集後も一貫した描画シーケンスを生成可能としました。教育、創作支援、アクセシビリティ用途に適し、特に従来の一括生成型AIとは異なる、双方向・協調的な作画支援を実現しています。
 実験では、ユーザー編集後も高い視覚的一貫性が確認され、リアルタイム性や軽量性の面でも優位性を示しました。今後は多様な作画スタイルやハイブリッドモデル、リアルタイムUIの開発を予定しています。

●大石耕生さん(大学院情報学研究科修士課程1回生)
『生成AIを活用した新しい書籍作成プロセスの開発』
【概要】
 近年、急速に進化する IT トレンドに対応した情報提供が求められる中、出版プロセスの長期化により情報が市場に出る時点で陳腐化する課題が顕著です。特に、技術革新や新しい知見が日々更新される分野では、書籍出版までに数か月以上を要する現行のプロセスでは、迅速性を重視する需要に対応できないという問題があります。このような背景から、出版プロセスを根本的に見直し、効率化と情報の即時性向上を図ることが求められると考えます。本研究では、生成 AI を活用して音声データの文字起こし、プロット生成、編集支援、を統合した新しい書籍出版プロセスを提案します。出版プロセスの効率化と手作業削減の可能性を評価する目的で、シンポジウムの発表動画を基に生成された初期原稿と専門家が添削した原稿の比較分析を行い、編集支援の半自動化を目指します。また、生成 AI 技術が文字数の変化や修正パターンに与える影響を特定するために、修正項目やその傾向を調査しました。これにより、出版プロセス全体の短縮と情報の即時性向上を目指したシステムの有効性を検討します。

●小向脩平さん(大学院情報学研究科修士課程1回生)
『生活習慣病予防に効果的な散歩経路の提示によってAEDと健康を共にケアするアプリ』
【概要】
AEDの管理には課題があり、すでに廃棄されたAEDがデータに残っていることがあります。このため、緊急時にAEDが見つからなかったり、故障していて使えなかったりするという課題があります。
 そこでこの研究では、住民が自発的にAEDの見守りに参加できるWebアプリを開発しています。このアプリは、近所の複数のAEDを効率よく巡回できるウォーキングルートを自動で作成して提示します。 このルートは、歩くことで自然と生活習慣病予防に効果的な運動量も満たせるように距離に調整されています。つまり、利用者は地域貢献のついでに、自身の健康もケアできる仕組みを目指しています。

●岡本和佳さん(大学院情報学研究科修士課程1回生)
『SketchRNNを用いたお絵描き人狼ゲームのAIの構築』
【概要】
 非対称型対戦ゲームの1つである「お絵描き人狼ゲーム」のAIを構築することが本研究の目的です。C++言語上で、描画処理用のSDLライブラリとTCP/IPによるソケット通信を組み合わせることで、ネットワーク通信型の「お絵描き人狼ゲーム」を作成しました。
 ゲームは4台のクライアントと1台のサーバーの間でゲームが行われ、クライアントの1台をAIとすることを目標としています。これまでの研究では、Googleが公開しているデータセット‟Quick、 Draw!"を用いて学習したSketchRNNによってAIの基礎システムを構築しました。
 今後は、お題に関する描画系列をAIが生成できるようにすること、AIが他のプレイヤーの描画からお題を推定する機能の構築などの課題を解決していくことでAIプレイヤーを改良していきたいと考えています。

●小椋亜夜さん(大学院情報学研究科修士課程1回生)
『クラスターを使ったメタバースキャンパスの体験』
【概要】
 離れた場所からでも大学の雰囲気を感じられるように、キャンパスの建物をデジタルで再現した「バーチャルキャンパス」を作成しました。京都橘大学の建物を、動画から切り出した写真をもとに立体的な形で再現し、パソコンやスマホで体験できるようにしています。また、 初めて使う人でも迷わないように、操作の説明や案内表示も工夫しました。これにより、遠くに住む高校生や関係者が、実際に訪れなくても大学を身近に感じられるようになることを目指しています。
 今後は他施設への展開や、ユーザーの操作ログに基づいた案内機能の最適化を目指します。

●中川龍馬さん(大学院情報学研究科修士課程1回生)
『マイクラで構築された大学キャンパスの散策』
【概要】
 オープンキャンパスの来場者や、キャンパスの構造にまだ不慣れな新入生を対象に、京都橘大学のキャンパスを理解しやすくすることを目的として、箱庭ゲーム『Minecraft』内に大学のキャンパスを再現し、ナビゲーションシステムを作成。ユーザーはMinecraft上に再現されたキャンパスを自由に探索でき、各所に配置されたNPCから、大学の施設案内や概要説明を受けることができる。
 今後はAIを活用した、よりパーソナライズされたナビゲーションの導入や、バーチャル空間を活用した学習支援・イベント開催なども視野。

●加藤諒我さん(大学院情報学研究科修士課程1回生)
『感情や意見を共有できる新たな読書スタイル「語らいブック」』
【概要】
 他者との感情共有による読書体験を目的に、音声とリアクションを組み合わせた共読型Webアプリ「語らいブック」を開発した。
 利用者は朗読音声を聞きながら、チャットや感情リアクションを通じて他者と同じ物語を共有する。音で聴くことにより、両手が空くことで、従来では不可能だったリアクションやコメントをすることができる。複数人の視点や感情に触れることで、自己の理解が広がり、より多層的な読書体験が得られる仕組みである。
 今後の目標として、webアプリケーションの内部をより良いものにしたいと考えている。

【2024年度のニュースはこちら】
日本新薬(株)主催の「Digital縁日」で学生作品9点を出展!クリエイティブな展示で会場を彩りました!
https://www.tachibana-u.ac.jp/faculty-cat/economics/economy/2024/10/digital9.html


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