【文化交響Vol.5 アフター万博】あの世界がまもなくやってくる。AI・ロボットと生きる未来、あなたならどう描きますか?
AIやロボットとの共生、自然との関わり、人の生き方─。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)では、様々な「人とテクノロジー」の未来が描かれました。自由に豊かに生きるために未来をどうデザインしていくか。
日本の科学技術を牽引する先駆者、産業界のリーダーたちが語り合いました。
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日本を牽引する4名のリーダーが語る、未来への羅針盤 -アフター万博、AI・ロボットと共に生きる社会とは- クロストーク 開催
【登壇者プロフィール】
⽯⿊ 浩 ⽒
【大阪大学大学院基礎工学研究科 教授・栄誉教授、2026年度京都橘大学 客員教授】

大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。博士(工学)。知能ロボットや認知科学の研究開発を行い、人間アバター共生社会の実現を目指す。遠隔操作型アンドロイドの「ジェミノイド」、自律対話型アンドロイド「ERICA(エリカ)」などを開発。内閣府ムーンショット型研究開発制度「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」プロジェクトマネージャー。2025年日本国際博覧会ではシグネチャーパビリオン「いのちの未来」 をプロデュース。
小沢達也 ⽒
【株式会社パソナグループ グループ営業総本部 グループ営業本部本部長補佐 兼 総合営業部長、2025年日本国際博覧会 PASONA NATUREVERSE 館長】

2025年日本国際博覧会 PASONA NATUREVERSE 館長大学卒業後、同社に入社し全国の人材サービス関連業務に従事。近年は同社が協賛する国際イベント等の運営組織に出向し人事計画等を担当。
2025年日本国際博覧会では、パソナグループのパビリオン「PASONA NATUREVERSE(パソナネイチャーバース)」の館長を務めた。
澤邊芳明 ⽒
【株式会社ワントゥーテン 代表取締役社長 CEO】

京都工芸繊維大学入学後、バイク事故に遭い、手足が一切動かない状態となる。大学に復学後、24歳で同社を創業。XR・AI等のテクノロジーを駆使したプロジェクトによって企業課題、社会課題を解決する。2025年日本国際博覧会では、TEAM EXPO 2025 スタートアップ ブーストプロジェクトのプロジェクトリーダーを務めた。
松原 仁 ⽒
【京都橘大学 工学部長・ロボティクス学科 教授】

東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了。工学博士。通商産業省工業技術院電子技術総合研究所(現・産業技術総合研究所)研究員、公立はこだて未来大学教授、東京大学教授を経て、2024年4月から京都橘大学教授。専門分野は人工知能。ゲーム情報学、観光情報学研究にも取り組む。
人工知能学会元会長、情報処理学会前副会長。
[ファシリテーター]
前⽥彩名 ⽒
【FM京都 α-STATION DJ】

α-STATIONでは[UICK Radio]などを担当。自然体かつ柔らかな語り口が好評で、音楽はもちろん様々な番組のDJを務める。
冒頭はケーススタディとして、大阪・関西万博2025で展示された技術や取り組まれているプロジェクトについて、各登壇者が紹介。石黒氏からはテーマ事業プロデューサーを務めたシグネチャーパビリオン「いのちの未来」のコンセプトや、誰もが社会参加できるアバター共生社会の実現を目指す取り組みについてお話しいただきました。小沢氏は自身が館長を務めたパビリオン「PASONA NATUREVERSE」で提示した生命の未来と可能性や、今回の万博への想いを語られました。澤邊氏は「TEAM EXPO 2025 スタートアップブースト」のプロジェクトリーダーを務められたほか、万博全体のデザインシステムの構築など多数のプロジェクトに携わられました。万博が技術を社会実装する場になることの、その意義を解説されました。松原教授は共同研究チームとして万博に出展した「ミライノカーリング」を紹介。カーリングの試合状況を読み取り、戦術を評価・構築する新しいAIの実現を目指していること、また、万博後の未来におけるAIやロボットの展望を語りました。
続くクロストークでは、「デジタルやIT、ロボットなどの新しい技術の発展と共に築かれる未来社会」を軸に、3つのテーマに沿って議論が進みました。

石黒 浩 ⽒

小沢達也 ⽒
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澤邊芳明 ⽒ ⽒
テーマ①【AIロボティクスの最先端技術は、「便利さ」だけでなく、人間の孤独・安全・創造性を満たし、可能性を拡げる存在になるか。】
1つ目のテーマでは、「AI・ロボットと人間、新しい未来」をテーマに、技術が人間の本質や社会、働き方にどのような変化をもたらすかについて議論が展開されました。石黒氏は、人間を「テクノロジーによって能力を拡張し、進化し続ける存在」と言及。人間はまだ進化の途中にあり、今後あらゆる面がAIによって強化されていく時代になるだろうと考えを示されました。また、アバター技術がもたらす具体的な社会変革について、澤邊氏は「多様な人の働く力を引き出す大きな力になる」と語られました。一方で、松原教授からは「AIは知能という人間に直結する部分に深く関わっているため、人々が戸惑いを感じるのは自然なこと」と分析。AIに任せるか、人間としてのプライドを守るかという戸惑いはいずれ解消されていくと述べられました。AIやロボットを単なる便利な道具として捉えるのではなく、人間が進化し、より自由に生きるためのパートナーとして再解釈する時間となりました。
テーマ②【2040年の社会、文化、教育、経済、技術はどのような変化・進化があるか。さらに50年後の「人間」はどのように進化しているか。】
続いて、現代の高校生が社会の中核にいる2040年や、もっと先の50年後の未来を見据え、技術の進歩が社会や人間の在り方をどう変えるかに焦点が当てられました。松原教授は、「将来的にAIやロボットは特別なものではなく、当たり前の道具となっていくだろう」と語りました。小沢氏は「テクノロジーはあくまで自然や人間を活かすためにあるべき」と強調。生命の本質に目を向け続けたいと語られました。

松原 仁 ⽒

前⽥彩名 ⽒
テーマ③【人間とは何か、豊かさとは何か。】
クロストークの最後には、すべての学問に通じる問いとして「人間とは何か、豊かさとは何か」についてそれぞれの視点から議論されました。石黒氏は、人間の本質は「進化し続けること」にあると述べ、進化するためには、人を、自分を、社会を知らないといけない。テクノロジーやAI・ロボットは人を映す鏡であり、色んなことを教えてくれるはず。自分を知ろうとすることが人間にとっての豊かさの本質であると語られました。澤邊氏は、「人間とはテクノロジーを使う生き物であり、自らを律する強い自理性や社会的な協調性が求められる」と指摘。小沢氏は「人間は38億年前から続く生命進化の過程にあり、自然の一部であるという自覚を持つことが重要」と言及。最後に、松原教授から「日本にはロボットをパートナーや友達として受け入れる文化があり、この共生の視点が面白い未来を作る鍵になる」と語られ、クロストークを締めくくりました。
最後に、4名の登壇者から次世代を担う若者たちに向けてメッセージが送られました。「問いを持ち続け、考え続けること」や「自らの意志で未来を切り拓くための勇気」、「視野を広げ、世代を超えた共創」、「自ら選択し、失敗から学ぶこと」など、主体的な姿勢の大切さが伝えられました。
本イベントに参加した、本学入学予定の留学生や、陶灯路を担当したまちづくり研究会の学生からは、「ロボットとの共生について考えがアップデートされた」「技術によって障害を持つ人が自由に活躍できるような未来が来てほしい」「ロボットが人に生きがいを与える存在になり得る」など、AI・ロボと生きる未来それぞれが考え、新たな価値観を見出した声が寄せられました。
また、会場には本学のまちづくり研究会が「陶灯路」の演出を行いました。山科地域の伝統産業である京焼・清水焼に幻想的な灯りをともす陶灯路に彩られ、会場は歴史・伝統工芸・テクノロジーが交響する空間となりました。
(所属は2026年2月時点)
■工学部情報工学科 2026年度入学予定者 ヌリラエフ アブドラジズ ファルホドヴィッチさん(出身:ウズベキスタン共和国)
今回の講演会で日本の先生方が語った、AIやロボット技術が普及した未来社会について、とても面白そうだと感じました。技術によって誰もが自由に活躍できるような未来が来てほしいと思います。私は4月から京都橘大学の工学部情報工学科に入学して、専門的な知識を学び、ゲーム開発者になりたいと考えています。ですが、今回の講演会に参加して、ロボット制作にも挑戦したいと強く感じました。大学には3Dプリンターなどの最新設備もあるので、それらを使って取り組んでみたいと思います。
■経済学部経済学科1回生 佐藤蒼生さん
ロボットについて、当初「人間の仕事を奪い、生きがいを奪うのではないか」というネガティブな印象を持っていました。しかし、講演会で紹介されたアバターを通じて高齢者が若者と交流し、新たな生きがいを得ている事例を知り、ロボットがむしろ人に生きがいを与える存在になり得るというポジティブな視点を持つようになりました。
ChatGPTなど、AIは大学に入学してから触れるようになり、英文添削や検索など、正しい使い方をすれば役に立つ便利な道具として日常的に活用しています。AIが既存の情報を元に答えを出すのに対し、人間は何もないところから生み出す能力があると信じています。テクノロジーが進化する未来だからこそ、自分の思っている気持ちを自らの言葉で表現する力を磨き、持ち続けていきたいと感じました。
■工学部建築デザイン学科1回生 井野珠希さん
現在は授業の調べ物や、ポスターなどの掲示物制作において画像生成AIに便利さを感じています。一方で、将来的に職業の多くがロボットに代替されるというニュースに不安を抱いていました。しかし、アバターの活用やコスト削減といった利点を知り、共生の可能性について考えがアップデートされました。
私は建築学を学んでいます。将来、AIが設計図を引くようになる可能性も感じていますが、AIは既存の情報の組み合わせに留まると考えています。人間だからこそ生み出せる斬新なアイデアや新しい発想を大切にし、過去の作品を学ぶだけでなく、それを自分の力として養っていくことでロボットと共生していきたいです。また、人の記憶をロボットに引き継ぐ技術については、死があるからこそ人を大切に思えるという感覚を大切にしたいと思いました。
■文学部歴史学科3回生 田中伶治さん(まちづくり研究会代表)
私たちまちづくり研究会は大学キャンパスや近隣の団地を中心に活動していますが、今回のような長い歴史があり、国登録有形文化財でもある場所に出張して行う陶灯路には大きな価値があると感じています。今回は地域の方のほか、文化や歴史、AIなどに興味をもつ多様な人が訪れていました。伝統工芸である清水焼に映し出された灯りを見ていただき、新しい視点での反応や評価を得られたことは大きな収穫でした。
まちづくり研究会が活動のテーマとして最も重視しているのは『繋がり』です。当日だけでなく、事前の打ち合わせからどうすれば面白くなるかを共に考え、イベント後も継続して良い関係を築いていくことを大切にしています。
今後は、今回のイベントのようにロボティクスの技術と伝統工芸を組み合わせるといった、これまでにない新しい価値の創出にも取り組んでいきたいと考えています。
本学では、技術は⼈の豊かさのためにあるという視点を軸に、その「豊かさとは何か」を学⽣たちが多様な観点から考え、意⾒を交わし合える環境を大切にしたいと考えています。今回のイベント内容は、2026年4月27日(月)に発刊される朝日新聞出版「AERA」に掲載予定です。

【関連サイト】
- 京都橘大学 新学部・新学科 特設サイト「ぜんぶ、越えてく。」
- 「文化交響Vol.1-文化の創造と伝統の継承。次世代のクリエイターへ-」
- 「文化交響Vol.2 大津春の陣 固定観念を討ち、知の秘境へ挑む!~歴史・文化・AIがひらく未来への扉~」
- 【文化交響Vol.3 × 大カプコン展―世界を魅了するゲームクリエイション】 君の"好き"は、世界を変える"チカラ"になる! ゲームが創る未来の文化とは?
- 【文化交響Vol.4 in 大阪・関西万博「EXPO共鳴フェス」】 もしも相棒がロボットだったら?!
- 松原教授の夢と研究の世界に出会える「ヒトシの部屋」


