京都町中可令触知条々 釈文

　　　京都町中可令触知条々

一　　諸人訴訟之事
右裁許之時、論所双方之外奉行所へ不可来、但親子兄弟非制之限、此外一切令停止畢、若双方可為証拠人者同前可罷出、兼又去元和五年以前之訴訟不可申来事

一　　諸商買之事
右諸国商人交易自由之便、諸人之要用也、然者私之法をたて、多勢をくミし、起請文を書、不可致諸商買、其身之意次第たるへし、惣て就諸事結党、起請文を書事者先規堅被停止了、今以非新儀之法、若違犯之族有之者早奉行所江可告来、以糺明之上可処重科、但朱銀之両座可為各別事

一　　質物取置事
右質屋之札、双方之交名・在所付、諸人よミ候やうに可書付、よめさるやうに札書付候事堅令停止畢、盗物取置事先規之制法也、所詮質物之あたひ不定高下故也、自今以後諸質物之価以三分二質主へ可相渡、三分一者質屋之可為利潤、又利足之事者相対たるへし、如此相究上者、妄に下直之質物不可取置、若盗物質屋に取置におゐてハ、質屋可処重科事

一　　諸証文判形之事
右諸証文及対決、或印判或自判持出といへとも、他人慥此判を見しらす、尤非無不審、難在証拠、自今以後京都居住之町人不及云、借屋之者たりと云とも、町中たかひに判形可見知置事

一　　就売買書物取替事
右当時いたしをくはかきといふ事、及相論時、為証文奉行所に持来といへとも、不分明難議定、於向後即時代銀を不渡、証文取かハす事有之者、慥一札可取置事

一　　火事出来之事
右火事出来之時、出向火事之場輩、水を可持来旨毎度雖触遣、弥可存其旨、次武士之奉公人并町人刀脇指をたいし不可出火事場、若此掟不承引之輩在之者、見相に可搦捕間、堅可存知事

一　　武士之牢人不可隠置事
右件之輩、以前重々堅御法度に候、猶以可存其趣、若背此旨於隠置者、宿主之義者不及云、町中可為曲事、厳密に可致其沙汰事

一　　はてれん門徒停止之事
右此徒党露顕次第被処死罪者也、至て厳重之制法先畢、自然彼門徒町中に在之者早速可申出、褒美可遣、若隠置他所より於申出者、其町中可為同罪事

一　　新寺建立制止之事
右近年為私称寺号・院号事、自由之至也、向後令厳制事也、先規御定如此、依之度々此旨相触畢、若相違之輩、新寺造立之所有之者、早奉行所へ可申来事

　　以前条々所定也、洛中不残可令触知者也、仍如件

　　　元和八年八月廿日　周防守（印）

　　　　　　　　　　下京

　　　　　　　　　　　　年寄

[後筆]

右
板倉周防守様御下知書廿一ヶ条之内也、久秘筐底て所及虫損多矣、依之今般於当町新加修錺畢、永伝後代深頂奉珍蔵守護者也

　　文政四年辛巳孟春
　　　　五条荒町拾町組
　　　　　　　　　　当町
　　　　　　　　　　　　大堀町
　　　　　　　　　　　　吉水町
　　　　　　　　　　　　玉屋町　
　　　　　　　　　　　　悪王子町
　　　　　　　　　　　　高砂町
　　　　　　　　　　　　富永町
　　　　　　　　　　　　材木町
　　　　　　　　　　　　月見町
　　　　　　　　　　　　布屋町
　　　　　　　　　　　　長刀切町