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コラムVol.2
合理的配慮とバリアフリー

このコラムでは、以下の内容を取り扱っています。

  • 合理的配慮とは、障害者の社会参加を前提として社会的障壁を除去(バリアフリー化)すること。
  • 合理的配慮は、障害者権利条約や障害者差別解消法に基づく義務であり、個人の価値基準による配慮とは異なる。
  • 合理的配慮については、過重な負担にならない範囲で個別の調整や変更を行う必要がある。
  • 電車の優先座席は、合理的配慮の在り方を考える一例である。

以下、コラム本文をどうぞ

 合理的配慮という言葉をご存じですか? 合理的配慮とは、障害者の社会参加を前提としていない社会の在り方(社会的障壁)を変更することです。日本も批准している障害者権利条約に“Reasonable Accommodation”として示されていますが、日本語の『配慮』が持つイメージ(不憫を憐れんで温情をかける)とは異なります。

『配慮』『個人が行うこと,優しさなど個人的な動機付けによって行う言動』であり、他方『合理的配慮』『社会(自治体や企業等の団体)が行うこと,設備やルールの変更』という図式になります。障害者差別解消法によって、合理的配慮を提供することが、自治体や企業等の団体の義務となっていることから、これまで障害者個人が背負わざるを得なかった負担を、社会側の責任として負担することを意味するかもしれません。

 具体的な例として、電車の優先座席を考えてみましょう。『配慮』で考えると『配慮は任意』ですから、基本的に誰でも座ってよいですね。もし必要そうな人が乗ってきたら『個人』の判断や価値基準に基づいて譲ればよいのです。しかし、こうした優先座席の在り方が、移動のために列車を利用する上で社会的障壁(バリア)であると考えるとどうでしょうか。

 バリアを取り除くため、運輸事業者は、優先座席を必要とする人が必要となった時に座席を利用できるよう、既にいくつかの事業者が実施しているように、座席へのアクセスを確保するため、座席だけでなく近く一帯を優先座席エリアとして指定する等、必要でない人が利用しないような措置を取るか、優先座席付近に表示されている特徴やマークを示す乗客が座ろうとする意思を示せば、特に事情がなく優先座席に座っている乗客は席を換わる必要があることをアナウンスしたりする等、優先座席の利用に存在するバリアを取り除く(バリアフリーにする)措置を取る必要があります。

 西日本に広い電車網を持つとある鉄道会社は、優先座席近くの表示に、日本語では『この席を必要とされている方におゆずりください』と書き、英語では『These seats are reserved for passengers with special needs.』と書いています。

 英語では『合理的配慮』の主旨を踏まえ『優先座席は予約席(≠自由席)である』と示して、必要な人が必要な時に使えるよう、バリアフリー化しているんですね。ただし、空席が目立つ状況であるにもかかわらず、事情がない方(障害のない人)の利用を阻むルールまで実装することは『度を越えている』可能性があります。こうした考え方の枠組みを『過重な負担』と言い、合理的配慮によってバリアフリー化する際は、過重な負担が伴わないことに留意する必要があります。

 このように、障害のない人にとっては、十分バリアフリーになっていると思われる状況でも、目に留まりにくいバリアが存在しています。サポートリンクスでは、障害のある学生さんがそうしたバリアに出会ったとき、合理的配慮を申請するために意思表明し、対話の場に臨むことをサポートしています。

(執筆者:大野)