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喎蘭オランダ新訳地球全図

水戸赤水長先生閲・浪華橋本直政伯敏氏製・平安銭希明子遠甫校
寛政8年(1796)丙辰冬11月官許印行

蘭学者たちによって作られた世界図のうちでも最初期に刊行されたもののひとつで、寛政8年(1796)に開板許可を得て翌9年に刊行されました。校閲者の長久保赤水(1717~1801)は水戸の著名な地理学者であり、製作者とされる橋本直政、すなわち橋本宗吉(1763~1836)は、語学が堪能な蘭学者で大坂蘭学の祖といわれる人物です。

序文によれば、本図はオランダの地図帳に収められた地図からとったものであるといい、カリフォルニア半島が細長く大きな島として描かれ、オーストラリアの西半分だけが描かれている点などに特徴があります。

しかしなんと言ってもこの図で目を引くのは、東西両半球の周りを埋め尽くすように書かれた解説記事でしょう。一見、オランダ語に堪能な橋本宗吉が蘭書の知識を盛り込んで書かれた記事のように思われますが、内容を詳しく見ると、すでにある日本語文献を参考資料にしていて蘭書からの新しい情報はほとんどありません。

実は、本図の刊行を主導したのは出版書林の浅野屋弥兵衛と親しかった儒者の曽谷応聖と考えられています。赤水や宗吉の助言はあったかもしれませんが、実際には応聖が解説部分を含めて本図の作製を担当し、販売戦略上、赤水や宗吉の名前を前面に出したものと思われます。

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