世界万国全図説
幕末に木版で刊行された世界図です。18世紀の地理学者長久保赤水製作の世界図『地球万国山海輿地全図説』の系統を引くもので、序文を記した小林公峯は本図の作者と見られます。
本図を見ると、南部の3分の1近くを占める陸地が注目されます(現在の南極とオーストラリアが陸続きとなっている)。当時、地球の南には巨大な大陸が存在するという地理情報があったのです。こうした地理情報は、1602年刊の『坤輿万国全図』(明で刊行)でも見られ、地球の南に関する地理情報が進歩しつつあった幕末の段階でも、古くからの地理的知識が残り続けたことを本図は教えてくれます。
この巨大な大陸には「豪斯多剌里亜」(オーストラリア)、「墨瓦蝋泥加」(メガラニカ)、「新阿蘭陀」(新オランダ)等の地名表記が見られます。「豪斯多刺里亜」や「新阿蘭陀」は、『地球万国山海輿地全図説』には見られない表記です。地理情報の追加がおこなわれたことが分かります。
本図の上と下には、中華(清)・朝鮮国・暹羅(シャム)・阿蘭陀(オランダ)・亜魯西亜(ロシア)の船が描かれています。また本図下の外輪を有する「外国車船」については、イギリスの船を描いた可能性が考えられます。









