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コラムVol.4
ユニバーサルデザインの目的

このコラムでは、以下の内容を取り扱っています。

  • ユニバーサルデザイン(UD)を踏まえ、事前に多様な人のニーズを考慮することで、事後の調整(合理的配慮に伴うコスト)を減らすことができる。
  • UDは文字や教科書などの教育にも応用されており、誰もが平等に利用(参加)できること(=アクセシビリティの確保)につながる。
  • UDを取り入れるためにも、障害のある人の参加は重要であり、障害者エンジニアがイノベーションを生み出す可能性さえある。
  • サポートリンクスは、バリアフリーやUDの採用を後押しすることで、障害のある学生さんが大学で学ぶための支援を行っている。

以下、コラム本文をどうぞ

 ユニバーサルデザイン(UD)という言葉を知っていますか?その産みの親であるロナルド・メイス氏が設立した、ノースカロライナ大学のユニバーサルデザインセンターのWEBサイトには、『一人一人に合わせたり、専門的な設計をしなくとも、可能な限りすべての人が使用できるようにするための製品・環境のデザイン』と定義されています。UDの目的は、年齢や能力にかかわらず、すべての人に役立つデザインを行うことである、ということができるでしょう。

 『可能な限りすべての人』の中には、当然、障害のある人も含まれます。UDには、あらかじめ多様な人が参加する(使用する)ことを前提に、製品やサービスのリリース前の設計段階から、様々なプロダクトや教育などのサービスの中身を調整・変更するという、事前的な性格が付与されています。事後的な性格を持つ合理的配慮については、コラムVol.2をご覧ください。

 UDの例として有名なものは小学校の教科書の文字。かつては筆で書いたような文字(教科書体)であったものが、今はUDデジタル教科書体というフォントに変更されています。筆で書いた文字は、起筆に装飾があるなど、筆の入れ方まで再現されているため非常に複雑な形状をしています。複雑な形状は、文字を認識することが苦手な人にとってはもはや文字ではなく、したがって、文章を理解する能力があっても、黙読や音読ができません(こうした状態を印刷物によって起こる障害(印刷物障害)と呼ぶこともあります)。

 教科書の作成段階から、よりシンプルで見やすい書体を利用することで、文字の認識が困難な児童だけでなく、文字を本格的に学び始める新一年生にとっても、文字を学ぶという活動に平等に参加することができるようになりました。

 UDに基づいた設計は、製品だけに留まりません。一部の学校では『紙の教科書を読む』『デジタル教科書を読む』『音声読み上げで聴く』という方法の中で好きに選んでもらうという取り組みも行われています。こうした、より多くの人が平等に参加(利用)できるようにすることを『アクセシビリティの確保』と言い、UDの目的の1つになっています。ちなみに、アメリカやEUなどの欧米諸国では、UDに基づいた設計になっていない商品の販売(輸入販売含む)を行った場合、罰則が与えられるということまで実施されています。

 これから社会に出て、いずれは社会を創る側に立つ学生の皆さんには、設計段階の時点から多様な人が利用することを踏まえ、平等にアクセスできるようにするため、事後の調整をほとんど必要としないプロダクトを作ることの意義について知って欲しいと考えています。このためのキーとなるのが、障害のある人(当事者)の参加です。例えば、障害のあるエンジニアは、騒音の中でも聞こえやすいスマホ用のスピーカーや、AIを搭載して移動を補助してくれるAIスーツケースの開発を行うことを通じて、様々な製品やサービスのイノベーションをリードしています。

 大学が真にユニバーサルな環境となるためには、障害のある学生さんだけでなく、障害のある教職員の皆様からの声も必要としています。サポートリンクスは、配慮申請支援を通じて、大学教育にアクセスする方法をUD化することを後押しすることで、大学において、社会問題を解決することに貢献するための知識と他者とのコラボレーションスキルを身に付けるサポートを行っています。

(執筆者:大野)